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「新安沖沈没船出土駒」の文献(長さん)

 最近netで、実にありがたいサイトを発見した。
コメントに書いたサイトにある、新安沖沈没船、ある
いは東福寺沈没船と呼ばれる船で発見された、出土将
棋駒の写真を含む書籍「新安海底遺物展図録」の
紹介サイトである。
写真として、玉、金、桂馬2、香車2、歩兵2の計8
枚の駒が写ったページが、netで紹介され、ハング
ル文字で、説明書きが加えられている。
この難破船は、普通唱導集が成立した頃の、鎌倉時代・
最末期のもので、しばしば、飛車・角が欠けている事
から、この頃の小将棋がいぜん、飛車・角が導入前の
36枚制だったのではないか”という、議論がなされ
る事でたいへん有名である。なお、普通唱導集は西暦
1300年頃、この沈没船は1323年頃の物である。
ただし、少なくともこの書籍の写真には、駒の裏を撮
影したものが無い。もし、この写真の桂馬と、香車、
歩兵の裏の、成り金の書体が全部公開されていたなら、
更にこの時代の小将棋に、持ち駒ルールが有ったのか
無かったのかが、ネットの画像を見ただけで、はっき
りしただろうと思える。これも既に将棋史の研究者間
で昔議論されたように言うまでも無く、「持ち駒ルー
ルが有るとすれば、成り桂馬、成り香車、成り歩兵を、
対局中に相手の対局者が、盤面で、こちらの駒に手を
触れなくても、その駒を仮に獲得したら、どういう駒
種として、打つ事が出来るのかが、現在の日本の将棋
の駒と同様、判別が可能だから、そのような作りが必
然」という事である。
 なお、ハングル語の解説文には、後半に、駒の名前
と共に、漢字での書き方、出土枚数構成の解説がある。
金将の文字が出てきた後で、成りの説明があるかどう
かを、ハングル文字でたどっても、”金”のハングル
語訳が特に見当たらないようなので、残念ながら、
この書籍の編者は、「日本の小将棋の持ち駒ルール成
立年代問題」という将棋史上の大問題には、余り詳し
くは無かったようである。ただし、この書籍情報以外
としては、webを調査すると、歩兵の裏が「今金」
のようであって草書の”崩し金”では無い事が判るよ
うな、写真はある。

何れにしても書籍の写真の駒の現物を手に取れば、鎌
倉末期時点で、日本の小将棋に、持ち駒ルールが有っ
たかどうかが、ある程度判るような、遺物自体は存在
している事が、紹介サイトから判り、将棋史、特に現
代の日本将棋の歴史に興味を持つ者としては、たいへ
んありがたい情報に違いない。

 なおこの写真のぱっと見だが、以下私見だが、この
将棋駒を使った将棋は、「取り捨てルール」だとの印
象を、多少私は受けた。駒の大きさが、写真では3段
階であって、金、恐らく銀、桂馬が同じ大きさである。
その事から、銀と桂馬は大きさだけでは、裏から元駒
が判別しやすくはなっていない。また香車については、
歩兵の大きさと、桂馬の大きさの、2タイプが混在し
ていて、”裏が香車で有る事が、大きさから判るよう
な配慮が欠けている”ように見えるからである。つま
り、香車は、盤面に並べた時の見てくれで、桂馬より
少し小さくしようとしたものの、木地師が3タイプし
か、駒形を用意しなかったため、場合によって、香車
を歩兵の大きさとしたり、金・銀・桂馬の大きさにし
たり、用意された木地の枚数の制約で、駒の形を変え
た事が、写真から判るのである。つまり少なくとも、
この時代は、将棋を好きで指すほどでもない、木地師
のレベルの人間には、小将棋の、持ち駒ルールは、
さほどの広がりを見せては居なかった、とは想像でき
るのかもしれない。以上の点は、多少作りが雑でも、
戦国時代の将棋駒の遺物を比べてみると、大きさで、
銀、桂馬、香車を分けているものも有り、違いが良く
わかる。
 むろん、普通唱導集の小将棋の所で、桂馬を進めて、
銀に”替える”と、手中に銀将を収める事の”喜び”
を唄っているから、その頃の小将棋の一部に、持ち駒
ルールは、有ったのだろうが。あるいは小将棋でも、
今ほどには、持ち駒ルール有りで指すのが、当たり前
という所までは、鎌倉時代末期でも、まだ行っていな
かった事を、この将棋駒の遺物は、物語っているのか
もしれないと考えられ、何れにしても貴重な遺物であ
る。(2016/12/26)
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df233285

上記文献のURLは次の通りです。(長さん)

エイチテイテイピー://myace.jp/books/html/products/detail/241
by df233285 (2016-12-26 06:30) 

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