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七言「桂馬前角超一目」の言い換えを考える(長さん)

 二中歴の将棋・大将棋の項で、桂馬の動かし方の表現が、表題の
ようになっている。桂馬は桂馬跳びだと決め付けると、桂馬跳び
のルールになるように、この部分を解釈するのだが、特に四文字目
の角を斜めと解釈するよりも、3~4文字目が続いており、「角の
升目のうち、前の2升目」と訳して、斜め45°に跳んで、二升目
先へ行くという解釈の方が、自然だという話がある。「桂馬は昔、
桂馬跳びではなくて、斜め2升目行きであった」というのは、二中歴
の記載も、根拠となっているのである。なおその他、水無瀬兼成の
将棋部類抄の、後期大将棋の桂馬の動かし方の点が、斜め45°に
なっているというのが、斜め前跳び説では、それに加えた、別の証拠
ということになっている。
 すると逆に言うと、二中歴の桂馬のルールの表現は、本来は、
斜め前2升目跳びだったにも係わらず、7言で、他の小将棋の駒に
合わせようとしたために、「3文字目を、前の升目、4文字目を、
その斜め、よって跳ぶ一目は前の升目である」と、無理に解釈して、
他国の『馬』に類似の動きであった、かのように解釈されてしまう、
曖昧な表現であったと言う事になる。しかし、通常は恐らく、
7文字韻のために、こうせざるを得なかったのだろうと、遊戯史学会
では、多数派として見られているのだろう。

 二中歴の小将棋記載では、曖昧な解釈を残す余地が無いようには
出来なかった

と、そう最初から、決め付けられているような空気が、あるように、
私には思えてならない。そこで今回は、本当にそうなのかと、この
ブログでは最近考えてみたので、結果を報告したい。答えを書くと、
桂馬の斜め2升目跳びを、7文字ちょうどで表現するには、

桂馬角攻超一目

と、表現する手が有ったように、私には思える。

桂馬は斜め攻め駒であって、一目跳んで行く

と表すのである。なお「攻」という字は、明確に、相手陣側へ進む意味の
字を探してみたのであり、「進」でも同じでは無いかと、思われるか
もしれない。ただし、進には漢文では”まいらす”と読み、「献上する」
という意味になる、特殊な動詞としての、用法があると言うので、避け
てみた。私のこの「攻」の使い方が正しいかどうかは、私には謎だが、
「進」や「攻」の私の探そうと意図した字に、本当に適切な文字がないの
かどうかについては、一考の余地が依然あるのではないかと私は思う。

個人的には、桂馬前角超一目には、漢文としては2つの解釈がある

ように私も思うが、桂馬跳びだと、少々無理をすれば”曲解”できるよ
うに、二中歴の著者が、不用意に、桂馬のルールを表現してしまったとす
れば、上の結果から若干だが、不可解だとは言えるかもしれないと思う。
 以上のように遊戯史研究者には、歴史学者以上に、漢文和訳の能力だけ
でなくて、和文漢文訳の能力も、ひょっとすると要求されているのかもし
れないと、私は感じている。(2017/06/02)

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