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摩訶大将棋の五段目は、”小から大へ進化”を示唆しているのでは(長さん)

摩訶大将棋(水無瀬兼成の摩訶大大象戯)が、日本の将棋の進化の中
の位置付けに於いて、どの位置に有るのかという点についての、先行
研究として、

大阪電気通信大学の高見友幸氏らの研究が名高い。

それによると、安土桃山時代の文献の記録に残る、摩訶大大象戯(以
下摩訶大将棋と表記)は、

始原的なもの

とされる。詳細な構成駒名の調査から割り出したもので、仔細は、高
見氏らの論文に、任せる。ここでは、その構成駒に関して、文献では
取り上げられ方のウエイトが低いと、私が個人的に思っている、
5段目配列から、むしろ平安小将棋を基点として、平安大将棋、普通
唱導集時代の大将棋、摩訶大将棋と、

小から大への進化の方が、事実を説明しやすい

という点を、指摘してみようと思う。つまり、大から小への進化は、
一般論として有り得ると思われるが、現実に有る

摩訶大将棋については、基点はやはり、平安小将棋とみられるのでは
ないかという示唆

をしようとしているのである。
 今回も、推論を述べる前に、理由を回答として先に書く。
 摩訶大大将棋の第5段目は、左端から、飛車、左車、横行、横飛、
堅行、角行、龍馬、龍王、摩羯、奔王、鉤行、龍王、龍馬、角行、
堅行、横飛、横行、右車、飛車と、19枚並ぶが、
飛車、横行、堅行、角行、龍馬、龍王、奔王、龍王、龍馬、角行、
堅行、横行、飛車という、部分13枚の動かし方のルールで示すと、
縦横走り、横走り前後歩み、縦走り左右歩み、斜め4方向走り、
斜め4方向走り縦横歩み、縦横4方向走り斜め歩み、縦横斜め8方向
走り、縦横4方向走り斜め歩み、斜め4方向走り縦横歩み、斜め4方
向走り、縦走り左右歩み、横走り前後歩み、縦横走り、という、

互いが不自然に規則的な、ルール成分になっており、かつその間に、

左車、横飛、摩羯、鉤行、横飛、右車、すなわち、動かし方のルール
で、右前左後方前3方向走りの右歩み、横走りの斜め歩み、角行2回、
飛車2回、横走りの斜め歩み、左前右後方前3方向走りの左歩み、と
いう、それぞれの両隣の駒のルールと、

滑らかに連結する訳でもない、6枚の走り駒類が、無造作に加えられ
ている点が不自然

と考えるからである。
 以上は回答だが、同じ事を以下、ごちゃごちゃしないように奔王か
ら右の10枚についてだけ、書き直すと、以下のようになる。
摩訶大大将棋の第5段目は、奔王から、
奔王、鉤行、龍王、龍馬、角行、堅行、横飛、横行、右車、飛車と、
10枚並ぶが、
奔王、龍王、龍馬、角行、堅行、横行、飛車という、部分7枚の動か
し方のルールで示すと、
縦横斜め8方向走り、縦横4方向走り斜め歩み、斜め4方向走り縦横
歩み、斜め4方向走り、縦走り左右歩み、横走り前後歩み、縦横走り、
という、互いが

不自然に規則的な、ルール成分になっており、

かつその間に、鉤行、横飛、右車、すなわち、動かし方のルールで、
飛車2回、横走りの斜め歩み、左前右後方前3方向走りの左歩み、と
いう、それぞれの両隣の駒、つまり
鉤行は奔王と龍王、横飛は堅行と横行、右車は横行と飛車という、
それぞれの両隣の駒のルールを、滑らかに連結する訳でもない、
3枚の走り駒類が、

無造作に加えられている点が不自然

と考えるからである。なおごちゃごちゃさせないために、奔王から
右のみを考えるやり方で、
奔王、龍王、龍馬、角行、堅行、横行、飛車
が、駒の動かし方ルールで、”不自然に規則的”というのは、右端の
飛車は、端だけは、更に右側からの補強が無い為に、龍馬と角行の間
から、3つ駒を飛び越して、右端に移されたと考えて、元の順位位置
に戻すと、
奔王、龍王、龍馬、飛車、角行、堅行、横行、
となり、8方、縦横、斜め、縦横、斜め、縦、横という順序になり、

奔王、龍王、龍馬、飛車、角行、堅行、横行という並びについては、
完全に、構成要素と配列が規則的になる

からである。
 そして、重要な点は、もし摩訶大将棋が、最初に考えられた将棋で
あるとするならば、どうして、

飛車、横行、堅行、角行、龍馬、龍王、奔王、龍王、龍馬、角行、
堅行、横行、飛車が、同じ段に並ぶ13升目の将棋が、直ぐにできる
ように、19升目の将棋を作ったのか

という謎が、説明できないと、私は考えるからである。
 本当は、13升目将棋の方が指しやすそうなので、

13升目の将棋が直ぐにできるような、19升目の将棋を、19升目
の将棋を作る事に自信を持っているはずの、摩訶大将棋のデザイナー
が、敢えてするというのが、そもそも不自然

だと、私は考える。
 従って、19升目の

摩訶大将棋は、13升目の普通唱導集時代の、奔王からの右の配列に関
し、恐らく3段目に、奔王、龍王、龍馬、角行、堅行、横行、飛車と
7駒が配列される、13升目の大将棋を前身とする将棋なのではないか

と、私は推定する。つまり、普通唱導集大将棋の3段目の配列に、奔王
より右だけの片側表記で、鉤行、横飛、右車、という左右の駒から、
自明に類推できるわけでもない、言わば”新人の駒”を3種類加えて、
3段目を5段目に上げて、摩訶大将棋の屋根下部分が、作成されたので
はないかと、私は推定するのが自然だと考える。
 なお、本ブログでは、今述べた普通唱導集大将棋は、同じく13升目
で、歩兵を上げて、上記の13枚の走り駒系列が挿入される前の、

平安大将棋の子供

と見ており、また平安大将棋は、標準型9升目平安小将棋より後発の、
いわば第2標準として作成された物と見ているため、結局摩訶大将棋は、

小→大と進化して、おおもとは平安小将棋

と言う事になるのである。
 むろん、摩訶大将棋の第5段目の走り駒段について、中央奔王右から
の10駒について、全規則的に、走り駒が配列できるわけが無いという、
技術的問題が、明らかに存在するのであれば、上記の私の推論は崩れる。
 しかし、たとえば、実際とは違って、

奔王、暴風、龍王、龍馬、角行、飛鹿、横猪、堅行、横行、飛車

でも良かったはずで、これなら10枚とも、連続的変化である。ちなみ
に、上記は右側だが、左側は、暴風の代わりに、前後が左右に入れ替わ
る、”淮川”でも、良いかもしれない。
 こうすると、架空の摩訶大大将棋の第5段目は、左端から、
飛車、横行、堅行、横猪、飛鹿、角行、龍馬、龍王、淮川、
奔王、暴風、龍王、龍馬、角行、飛鹿、横猪、堅行、横行、飛車
と、19枚並ぶことになる。なお大局将棋にある暴風は、横に歩む飛牛、
大局将棋にある淮川は前後に歩む奔猪、大局将棋にある横猪は横に走り、
その他6方向に歩む動きである。ここでの議論は、

その動かし方のルールが大切なのであって、名前を決めるのは別の要因

であるから、既存の動かし方のルールを取る、駒名を当てはめている。
 何れにしても以上述べたように、歩兵段の直ぐ後ろの5段目に、

13枚は規則的で、残りの6枚は、どうしても、異質の駒を入れなけれ
ばならなかった、特に強い理由は、摩訶大将棋にそもそも無い

と私は思う。
 つまり、この事は19升目の摩訶大将棋が、13升目の平安大将棋族
の将棋の

小から大への進化物であるという、疑いを、抱かせるもの

なのではないかと、私は思う。
 高見友幸氏は、摩訶大将棋の始原性について、たくさんの根拠を挙げ
られている。そのため彼の説を、これだけでは完全には崩せないのかも
しれないが。少なくとも全ての事実が、彼に味方しているとまでは、行
っていないのではないかと、私には以上のように懸念されるのである。
(2018/03/05)

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