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二中歴大将棋の書写者。なぜ桂馬を書き忘れ、誤記したのか(長さん)

現代に残る、二中歴の大将棋の記載には、最下段の初期配列に、誤
記がある事で有名である。玉将から、片側を袖に向かって書くと、
本来、玉将、金将、銀将、銅将、鉄将、桂馬、香車の、7枚のはず
だが、玉将、金将、銀将、銀将、銅将、鉄将、香車となっており、

銀将がだぶっていて、桂馬が抜けている。

ただし、二段目の配列を説明する際に、飛龍の位置の説明に桂馬が
現われるので、正しい配列が、容易に推定できるとみるのが、今の
所定説だと私は認識する。
 今回は、二中歴の書写者が、このミスをしてしまった原因を論題
にする。
 回答をまず、いつものように先に書く。
 二中歴の書写者が、平安大将棋の駒の動かし方ルールを、強い駒
の動きを初期配列に皆書き加えたときに、全体として、陰陽道の
五芒星の形になると認識していたので、

桂馬はだいたい端列の駒と、書写者は認識するクセがあった。

そのため、最下段の最後から2番目が桂馬でなく、鉄将と書いてし
まってあっても、

不自然感が彼個人には感じられず、桂馬が無い間違いを見落とした

と本ブログでは推定する。
 以上について、以下説明する。
 まず二中歴の初期配列説明図の間違いであるが、著者の三善為康
そのものが間違えた可能性も、ゼロではないだろう。しかし、その
証拠は全く無い。今の所、江戸時代の前田藩の書写の時代までには、
誰かが誤写したとしか言いようが無いだろう。だが、間違いの内容
からみて、平安大将棋に玉・金・銀・銅・鉄の将駒が有る事が、
書写者の平安大将棋に対するイメージとして、強く存在する事は、
ほぼ間違いないと思う。
根拠は、将駒を、本来より増加させてしまっているからである。
 つまり、間違えた書写者は、

中世の知識人一般と同じく、陰陽五行説の信者だった

と推定できる。将棋盤は、四角形であり、五行には角数が一つ足り
ない。しかし、仮に相手の方だけ玉将を後退させて、四角形盤を、
トポロジーの理論風に連続的に正五角形まで変形させると、平安大
将棋では、
①相手の横行の駒を厳密には一歩後退させた後に動かした動きの線、
②味方の飛龍の駒の動きの線を少なくとも、連続させて伸ばした線、
③味方の桂馬の駒を厳密には一升目袖に移動させて、端列に置いて
から、駒の動きの線を少なくとも、動きを連続させて伸ばした線、
の、

以上①から③の五枚の駒の動きの線で、五芒星型が作れる、跳び駒
走り駒の、駒の動かし方ルールになっている

のである。以上のように、二中歴の平安大将棋の書写者は、平安
大将棋の、初期配列上の、強い駒の動かし方ルールの俯瞰図を、
元々理解していたのではあるまいか。
 なお、上で②の飛龍は、角行動きと仮定すれば、その線がそのま
ま対角線だし、後の踊りの飛龍の動きと、異説のように仮定しても、
同じ方向に動かす手を連続して、6回繰り返すと対角線になる。
 ここで、間違いの元だったのは、③の桂馬の同一方向6回動きで、
相手の玉将の升目近くへ到達する、動きに関してだったとみられる。
つまり、桂馬を予め隣接した香車の位置に持っていってから、桂馬
の動きを内側に6回連続させると、玉将の位置に来るので、五芒星
型の一要素となる訳である。が、以上のように、書写者が二中歴大
将棋の初期配列に駒の動かし方ルールを、重ねて書いた図を俯瞰し
た結果、

桂馬は”端列駒の類”と、曖昧に誤認識してしまった

のではないか。そのため彼は、二中歴の大将棋の初期配列の、最下
段を書写したときに、玉・金・銀・銅・鉄の五行を強調したために、
うっかり銀をダブって書いてしまった上に、桂馬を忘れてしまった
のだが、後で見直したときに、

桂馬が端列駒だと、イメージしていたために、端から2番目が桂馬
になって、い無いという事に、うっかり違和感を抱かなかった

のではないかと推定される。そのため、桂馬の落としを見落として
しまい、二中歴の大将棋は、以降誤写され続けてしまったのでは
あるまいか。
 なお、この書写者の平安大将棋の大駒、跳び駒の駒の動かし方ルー
ルが作る、五芒星図形に対する全体イメージは、恐らく平安大将棋
のデザイナーと、いっしょで、正しかった可能性が強いと私は思う。
 恐らく、二中歴に記載された、平安大将棋の作者は、相手の横行
の動きと、2枚の飛龍、2枚の桂馬の連続で、五芒星型を作るよう
な、駒の動かし方ルールに、実際にしたのではないか。これは、二
中歴に記載された、平安大将棋が、平安時代の西暦1110年頃に、
陰陽寮関係者、たとえば安倍晴明の玄孫の陣頭指揮によって、原案
が作られたと本ブログで前に指摘した事と、良く一致する。ちなみ
に、西洋の星型と、現代人に考えられている五芒星は「吉川弘文館、
西暦2005年出版”文字と古代日本4 ”神仏と文字、平川南・
栄原永遠男他編 執筆者 山里純一氏 Ⅰ-2呪符の機能」によれ
ば、”日本の陰陽道に独特の記号であって、国内では呪符に書かれ
た記号として、多数出土するが、中国には無い”という。つまり
平安大将棋の駒の動かし方俯瞰図から、五芒星をイメージできると
いう点で、間違えた

書写者と平安大将棋デザイナーとは、信仰する宗教が恐らく同類

なのではないだろうかと、私は考える。
 なお、以上の仮説は、平安大将棋が定説通り、間口13升目、
奥行13升目の正方形升目ゲームであるという仮定が、前提とな
っている。最近、大阪電気通信大学の高見研究室のブログで、これ
とは異なる、

間口13升目、奥行き10升目の平安大将棋の仮説

が出されている。奥行きが10升目だと、相手の横行き走り、味方
の飛龍と桂馬の動きの連続で、五芒星状にはならない。
 今後、この高見研究室の新説については、どの程度の賛同者が現
れるかについて等、本ブログでは、注意深く見守ってゆきたいと考
えている。(2018/07/28)

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