SSブログ

将棋纂図部類抄、中将棋注釈部の鳳凰仲人等行度如・の等の中身(長さん)

今回問題にする、水無瀬兼成の将棋纂図部類抄には、中将棋図の後に
書かれた注釈部の最後に、”鳳凰仲人等行度如大象戯”と書かれて
閉められている。この一文をどう解釈するのかについては、大坂電気
通信大学の、高見友幸氏の詳しい先行研究がある。そこで、この文を
どう解釈して、駒数多数将棋の原初ルールをどのように推定するのか
に関しては、高見氏の研究を参照して頂くことにして、ここでは、こ
の文の読解ではなくて、

単に、”鳳凰仲人等”と書かれた、”等”の駒種の範囲に関して、何
者を指しているのかについてだけ問題とする。

最初に結論を書き、後で説明と、そう考えられる理由について述べる。

ずばり”等”には、龍王と龍馬の二種が含まれると考える。

では、次に以上の結論につき、根拠等を説明する。
 まず、鳳凰と仲人の例出してから、その他にたくさんの駒種を範囲
内にするとしたら、このような表現は、まずしないはずである。
”中象戯行度如大象戯”で良いはずだ。だから、等に含まれる駒の種
類は、せいぜい2~3種を、執筆者はイメージしているとするのが、
自然だと私は考える。
 そこで、2~3種類になるとして、何を言わんとすれば、このよう
な表現が出てくるのかだが、

論の枠組みに関しては、中将棋図の後で問題にしている駒の、範囲に
ついてだけに限定していて、そこで現われる駒のうち”獅子と飛鷲と
角鷹を除いた駒種類は、後期大将棋のルールを援用する”と言わんと
していると考えると、つじつまが合う。

なぜなら、将棋纂図部類抄の中将棋図の後の注釈で、駒のルールに関
する補足説明をしている駒種は、獅子、鳳凰、飛鷲、角鷹、仲人、
以上5種類と、駒名だけが登場する駒種類として、龍王と龍馬の2種
類があり、合計して7種類になる。そして、
獅子に関しては、居喰い、或る説曰く獅子の居喰いを許す(也)。と
記載され、一般的な獅子のルールが、中将棋の獅子には一部援用され
ない事を示唆する表現がある。また、飛鷲、角鷹は、中将棋に有って
も、後期大将棋には無いから、大将棋のルールが中将棋に、これら2
種類の駒に関して、援用される事はありえない。
 以上で、3種類の駒は”等”の範囲からは、除外される事は、明ら
かである。そうすると、残りは4種類になるが。鳳凰と仲人は、”等”
の前に具体的な駒名で挙げているから、”等”の範疇に当然入らない。
 すると、残りは龍王と龍馬の2種類だけになるのである。
 なお、なぜ龍王と龍馬を、”その他”にして差別したのかと言えば、

名前を挙げただけで、ルールの中身を、この将棋纂図部類抄中将棋図
後注釈部で、全く書いておらず、扱いが明らかに軽かったため

と考えれば、ぴたりと説明がつく。
 水無瀬兼成にしてみれば、後期大将棋に有る駒のルールに関しては、
将棋纂図部類抄では、詳しく別途に駒の動かし方のルールを示したの
は、前記の5種の駒だけであり、残りは単に、曼殊院将棋図の打点や
線を、基本的には写しただけであるから精度は低いと、認識していた
だろう。だから、今述べた獅子、鳳凰、飛鷲、角鷹、仲人、の5種類
以外の駒種については、

中将棋の駒の動かし方ルールは、後期大将棋と同じとか、そうでない
と議論しても、余りに元データ漠然としすぎている

と考えていた事は、少なくとも確かとは言えそうだと、私には思われ
る。
 将棋纂図部類抄の島本町教育委員会バージョン(水無瀬宮所蔵の、
正調、将棋纂図部類抄)の、後期大将棋の図には、鳳凰の打点がない。
これは、元々の曼殊院将棋図の、後期大将棋の鳳凰には打点があった
のだが。ひょっとすると、前後左右の歩みの点が無い等、水無瀬本人
が見ても、おかしなところが有ったのだろう。そこで将棋纂図部類抄
では水無瀬兼成は、大将棋の鳳凰に、ひょっとして打点を打たなかっ
たのではないか。
 恐らく加賀前田藩の書写者の書き込みかと思うが、将棋纂図部類抄
の後期大将棋の右猛豹の6升目上に、小さく、

”猛豹の真後ろの打点が抜けている。この図はおかしい”との旨の、
他人による書き込みの跡もある。

猛豹間違い.gif

曼殊院の将棋図自体、駒の動かし方ルールを示す打点に、元から幾つ
か、おかしな所も有ったのであろう。個別の駒の動かし方ルールに関
しては、本当に古来より、将棋纂図部類抄の島本町教育委員会バージョ
ン(水無瀬宮所蔵の、正調、将棋纂図部類抄)の通りだったかどうか
については、可能なら、鶴岡八幡宮遺跡出土の鳳凰駒の打点等、別の
史料も参照して、補正が必要な場合もあるのかもしれないと、私は、
個人的には考えている。(2018/11/29)

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。