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今小路西鎌倉市福祉センター中将棋木札。何故充て字用法不統一(長さん)

今となっては貴重な、紛失木札の写真が載っている成書、
”よみがえる中世3 武士の都鎌倉”平凡社(1989)
で、当時、上智大学講師だった、紹介執筆者の河野真知郎
氏によれば、この木札に象徴されるように、鎌倉市の遺跡
の墨書出土物は、”多くが、くずし字やあて字の用法が、
不統一”で、この木札については、”字の崩し方がひどく、
内容は良く判らない”との旨されている。後者については、
一部の、存在が推定される、”近”と、”行”、”上”と
見られる楷書で書かれた漢字を除いて、全部”ひらがな”
か、”変体かな書きのひらがな”であったというのが、
本ブログのこれまでの解釈だ。
 ちなみに”普通のひらがなの元漢字を崩すか、典型的な
変体ひらがなの元漢字を崩すのかは、江戸時代でも、同一
文書内で、統一されないのが普通”との情報が、”よくわ
かる くずし字 見分け方のポイント”山本明著、メイツ
出版(2017)に有る。
 では、

河野真知郎氏の認識が間違いかと言うと、そうではない。

 毛ひゃうの毛の崩し方が、毛は”も”の標準的な元漢字
なのだが、

この”も”は尋常な形ではなく、崩し字のやり方が判りに
くい

のである。つまり、ほぼこの一点だけが、河野真知郎氏の
言い分の根拠だろうというのが、本ブログの見方だ。そし
て、内容が黎明期の中将棋に関するものであったために、

意訳するという意味での解読は、駒数多数将棋の歴史や、
有る程度のゲームルールを知っていないとまず無理

だったとみられる。
 では、この”う-”にも見える、毛の崩し字の、やり方
の適切ではない、

”ひどい崩し方”は、何故起こったのか

を、今回の論題とする。
 最初に何時ものように、答えから書く。

猛豹は猛将の洒落で有る事を、字の表現からニジませる為

である。
 では、以下に説明する。
 一見すると、問題の木札の上段二列目は、”うし”にも
見える。しかし、”う”ではなく、第一字目は”も”だと
言うのが、本ブログの解釈だ。理由は、

(1)うに見える字の第2画目の”つ”の細長い部分が、
第1画目の”ゝ”と、通常の近世の”う”習字のようには、
繋がって居無い事。
(2)第2画目の”つ”の最初の鉤部分が、”う”の正し
い崩し方にしては、食い込みすぎている事。

以上である。しかし、ここを”も”と、本ブログでは読ん
だわけだが、崩し字の”も”は第2画目が”つ”の形では
なくて”8の字”にループして返って来るのが、普通のは
ずだ。
 そうなっていないのは、次に”|”を書こうとしたから
だと見られる。中途半端な”も”と棒との間には、一瞬の
筆の停止による、にじみのような跡も、少なくとも写真か
らは見える。”|”には、更に次の”ひ”との間に隙間が
あるが、読み手に

”しひ”と読ませようとしたというのが、本ブログの見方

だ。つまり詳細に見ると、不完全な字で”もしひゃう”と、
書いてあると見られる。ただし、不完全なので”毛ひゃう”
と表現しても、間違いでは無いと見る。

もしひゃう.gif

 なぜこのような、”しひゃう”で、豹を表そうとしたか
だが、これは中将棋の将棋駒では特別に、猛豹が猛将の洒
落だが、本当の旧仮名遣いが、”へう”であったため

と見る。
 つまり、”「もっしょう」と「もっひょう」の、言わば、
中間発音の駒が有る”と、書き手は言いたいので、
”しひゃう”なる、”豹”の読みを、後世の我々に提示し
たのであろう。これでは河野真知郎氏らが、困惑するのも、
無理が無い事だ。
 つまり、本ブログで前に指摘したように、麒麟が退避で
きないと、中将棋の性能が落ちる等のため、

鉄将は取り除いて、その位置に、本来なら鉄将の前の升目
に有った猛豹を、最下段に落とす、駒数92枚制中将棋を
指すようなゲームルールの改良を、この時までにはしたと
言う事を、”もしひゃう”の字の存在は恐らく示している

と言う事なのだろう。
 恐らく、くずし字の読みが堪能な、古文書の専門家なら、
この木札の字を、読み下す事は、既にできているのだろう。
 しかし、大坂電気通信大学の高見研究室で紹介している

摩訶大将棋を普通に指せる程度の、駒数多数将棋の愛好者
でなければ、この木札が何を言いたいのか、内容を理解す
る事は、まず困難

だ。
 よって、この木札は、遊戯史の専門の研究者が、皆再研
究できるように、

現在、現物を占有している者は、すぐに鎌倉市役所に現物
を返すべきだ

と、私は再度ここで発信する。(2018/12/21)

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