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牛僧儒の玄怪録。”巴キョウの橘園”の”将棋”を確認した(長さん)

前に、塩谷賛著”露伴と遊び”、創樹社(1972)に、
幸田露伴の将棋雑考の現代語訳が有り、玄怪録には、小人の戦争
と共に、同じ玄怪録に、”巴キョウの橘園”という”将棋”の文
字が現われる短編怪奇小説があると、その将棋雑考現代語自由訳
には書いてある事を、本ブログで前に一度紹介した。最近成書本
で、その内容が普通に今の日本語で書いてある書を、私も確認し
た。成書名は、次の通りである。

平凡社”中国古典文学大系 六朝・唐・宋小説選”
前野直彬著(1968)

上記著書では、問題の短編怪奇小説は”橘の中の仙人”になって
いた。
 結論から述べると、ここで”将棋をさしている”と表現された
”将棋”は、運に左右されない”チェス・象棋類”かどうかは不
明である。お互いにサイコロを振らずに、手を指しているのかど
うかも、この物語中では謎だし、日本語化された前野氏の文面で
は、”勝負がつくと”とは書いてあるが”一方が投了すると”と
は書いてない。だから、ゲームがチェス・象棋・将棋類と異なり、
終端局面まで進んでから終わるのか、チェス・象棋・将棋類と同
様、読んでみて、駄目だという局面で不利な側が、投了して終わっ
たのか、明確でない。ただし盤双六同様、2人制のゲームである
事は、日本語化された物語では、明確に述べられていた。
 牛僧儒が、”小人の戦争”を、この物語とは、別に書いてい無
いと、中国での象棋か将棋の初出文献には、”巴キョウの橘園”
は、入れられなかったと私は思う。
 次に、以上を踏まえて、物語の内容をざっと紹介する。なお、
以下の私の文は、本ブログの管理人の言葉で、日本語現代語の成
書を、更に意訳している。

四川省の巴キョウという所に、かんきつ類の橘の果樹農園があっ
た。持ち主は、霜の降りた季節の後で、普通の橘の実は摘み終え
ていた。が、売り物にならないような、大きさが大きいという点
で奇形の実が二つ残っていた。持ち主はそれも、もぎ取らせたが、
元々の普通の実を、大きく膨らませたようなもので、ふわふわで
異常に密度が低かった。
 そこで不思議に思い、実を割ってみると、中に身の丈が1尺位
の小人の老人が2人づつ、計4人入っていて、熱中して将棋を指
していた。老人達は実が割られたことも気にせず、2局ともその
まま指し続けられた。
 やがて、そのうちの一局の勝負がついた。すると、勝った方の
老人が、
「あんたの負けだ。賭けた品物を、王先生の所で会合がある日に、
渡してもらおう」と言った。すると、負けた方の老人が、
「会合の日が待ち遠しいものだ。橘の実の中で暮らす楽しみは、
商山での暮らしに劣らないが、但し橘の実を固定する根が、深く
がっちりと、実が動けないようにしてくれて、いなかったようだ。
そのため農園の主に、実がもぎ取られてしまったわい」と言った。
 すると、別の対局をしていた老人も、対局が済み、「腹が減っ
たので龍の乾肉を食べようかねぇ」と言い、袖の中から乾肉を取
り出すと削りながら食べ出した。しかし削りだす量が、ほんの僅
かでも、不思議な事に、膨らんで肉のステーキになるので、食べ
ても食べても、肉がほとんど減らなかった。そして肉を食べてい
た小人の老人が、食べ残った肉に水を吹きかけた。
 すると更に不思議な事に、その肉が生きた龍になってしまった。
 四人の小人の老人が、出てきた龍に跨ると、見る間に群雲が発
生して、激しく風雨が果樹農園を襲い、龍は空を飛んで4人の老
人といっしょに、消えてしまった。
 以上の話は150年ほど前の、隋から唐にかけての話であるが、
何時の事かはどうも、はっきりとはしない。(以上物語り内容)

 この”将棋”は、賭博の道具として使われているとの表現が、
少なくとも日本語の成書では、示されている。その点が同じ、
牛僧儒の玄怪録の”小人の戦争”とは少し違う。だから、ここで
の将棋は、日本の古代の盤双六系のゲームではないかとも、疑お
うと思えば疑えるようだ。
 ちなみに、本ブログでは、塩谷賛著”露伴と遊び”の将棋雑考
で、漢文で書いてあった”但不(レ)得(ニ)深(レ)根固(一レ)
帯爾”(のためここに居るのは不満)らしいが、本ブログの、
管理人の力では訳せないと、前に書いた。が今回、日本語の前野
氏の物語りの表現から、上記のように、

但し橘の実を固定する根が、深くがっちりと、実が動けないよう
にしてくれて、いなかったようだ。(そのため、農園の主に実が
もぎ取られてしまった)ので、ここには居られなくなった。

の意であるらしい事が、私にもようやく判って、ほっとした。
 以上のように玄怪録については、典型的に将棋と判る宝応将棋
が、小人の戦争に書いてある。そしてその他に、将棋とだけ書い
てあって、内容は不明だが、別の所にもあるという点で、多少の
サポートになるかもしれない、”巴キョウの橘園”という話が、
確かに存在はする。以上の事実自体が、ようやく今回、私にも判っ
たという訳である。(2018/12/25)

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