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メトロポリタン美術館東洋人遊戯図シャンチーか(長さん)

増川宏一氏の著書、ものと人間の文化史23-1
将棋Ⅰ(1977)の77ページに、絵だけ載っ
ていて、成立年等の情報が特に無い史料として、”
メトロポリタン美術館蔵のシルクロードにおける
将棋遊戯の図”がある。今回は、この絵がどこの
何時の遊戯を指し、将棋かどうかと将棋種を問題
にする。回答から書く。
舞台はカラコルムのモンゴル帝国を現しているよ
うでもあり、13世紀頃のものであり、はっきり
しないが、イスラムシャトランジのようでもある
し、交点置きで、序盤に自駒同士が連関している
中国シャンチーのようでもあり、ゲーム種はよく
判らない。
 では論を続ける。
 絵は、メトロポリタン美術館にあるという、
増川宏一氏からの1977年成書以外、私の所に
は正確な情報が無い。
 ターバンを巻いた男が白側、モンゴル帝国の兵
士のような人物に見える男が黒側を持って、確か
に盤上遊戯で、勝負を付けようとしている絵であ
る。審判のような位置に、私には王に見える人物
が、ゆったりとした椅子に座っている。見物人が
少なくとも10人居る。見物人はモンゴロイドで
あり、私にはモンゴル帝国に属する、王侯貴族の
ように見える。
 盤は、この絵ではデフォルメされて、真上から
見下ろした感じに描かれている。
 8段8行ないし、それより少し升目または路が
多いようだが、詳細は増川氏の成書上では良く判
らない。駒は升目置きしているのかもしれないが、
真ん中に、やや大きな駒が先後手共にあるようで
あり、正確に書いているように、私にはとても思
えない。一応”雰囲気としては”9筋ある、

中国シャンチー

の可能性を、否定できないようにも見える。
 冒頭でも書いたが、黒側の駒と白側の駒が分か
れて分布しており、その点では西洋チェスのよう
だが、駒の置かれ方の雰囲気は、中国シャンチー
の序盤の感じもする。2段目に黒の駒があり、や
や不自然だが。
 絵が何を言いたいのか、私には正確には判らな
いが。ひょっとすると、黒い髭を生やして、ター
バンを巻いた、イスラム教徒を連想させる男も、

モンゴル帝国時代には、中国人といっしょに、
自国のイスラムシャトランジまたは、中国シャン
チーか、何らかの象棋ゲームをした

という意味なのかもしれない。
 中国シャンチーは、モンゴルやチベットで現在
指されていないが。このメトロポリタン美術館の
絵が正しいとすると、

モンゴル帝国の首都の、カラコルムの宮廷等では
指されていたし、そばに居たイスラム教徒も一時
期にだが、指していた疑いがある

という意味なのかもしれないと、今の所一応、疑
う事にした。言い訳になるが、増川氏の成書の本
文とは、つながりが良く判らなかったので、今ま
で私は気がつかなかった。将棋Ⅰの77ページの
図は成立が8世紀ではなくて、13世紀の絵と見
ると、むしろ、価値が高い事が判る。
 なおwikipediaのシャトランジの項目
の”14世紀のペルシャのシャトランジ画”と、
増川氏の成書の図の絵は、たぶんだが同じもので
はないか。だとすると、モンゴル帝国の一ハン国
である、イルハン国衰退混乱期の、どこかの諸侯
の城で指される、イスラムシャトランジの絵だと
いう事になろう。(2020/04/06)

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Monozuki

いつも興味深く拝見しております。
お説の通り、増川氏の「将棋Ⅰ」中の絵とウィキペディアのシャトランジの項の絵は同じものだと思います。この絵は、メトロポリタン美術館のサイトで拡大したものを見ることができます。
https://www.metmuseum.org/art/collection/search/140006270?img=1
拡大すると、盤は8×8、駒は赤と黒で、おそらくシャトランジの駒と思います。対局しているのはササン朝の廷臣とインドからの使節です。立ち会っているのは「諸王の王」ヌシルワンすなわちホスロー1世です。フィルドゥスィーの「王書」の挿画でしょう。
by Monozuki (2020-04-06 14:36) 

df233285

Monozuki様
毎度ながら、ズバリ適切な御教示、誠に感謝致します。(長さん)
by df233285 (2020-04-06 20:02) 

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