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モンゴルには8×8升目32枚制シャタルの他になぜヒャーシャタルが存在するのか(長さん)

 日本には鎌倉時代末期まで、概ね主な将棋として、「将棋」と
略称されることもしばしば有る、小将棋の他に、大将棋が常に、
平行して存在し続けた。実は世界には、同様なパターンがもう一
地域あり、それは、モンゴルである。すなわちモンゴルの古典チ
ェスゲームに、シャタルという、西洋チェスと実質同じと見なし
てよいゲームがある他に、10×10升目40枚制のヒャーシャ
タルという、日本の大将棋様のゲームが存在する。日本の場合、
私見では、9×9升目36枚制取り捨てタイプの平安小将棋
(定説型)が、ゲームとして出来が悪かったための、新規開発と
既に述べたが、モンゴルの場合については、大小シャタルが、
どうして並存して居るのかを、ここでは考察する。結論としては、

盤升目を10升目四方にした時に、既に発生して居る、”中盤の
中央大穴棋譜の見栄えの悪さ”を隠すための工夫に成功して、
大盤升目ゲームが、たまたま生き残ったためとの説

を私は取る。なお、キャスリングが無い以外は、シャタルは、細
かい問題に目をつぶると実質チェスと同じと見てよいから、現在
チェスに、9×9升目36枚制取り捨て平安小将棋(定説型)
タイプのような、欠陥は無い。ので、鎌倉時代等の日本の将棋の
大小の並存とは、事情が明らかに別と考えられる点だけは、確か
と考える。
 そもそも、チェスの場合、8×8升目なら、中段の段数が少な
いので目立たないのだが、ポーンとキング以外は大駒ばかり、更
にナイトを更に除けば、全部走り駒なので、走り駒が中段に留ま
る確率の低下の効果は、2桁升目の10升目になれば、じわじわ
と目立つようになる。そのため、中段に空隙が出来た、棋譜の見
栄え悪いヒャーシャタルが、ヒャー駒(白象動きの駒)を、単に
加えただけでは増加した。そこで、10升目にすることによって、
チェスゲームは、見栄えに難が出来るので、普通は8×8タイプ
に駆逐されてしまうと、考えられるのである。
 前に、その回避策として、私もたとえば「女王」「僧侶」「城」
駒の少なくとも一部、たとえば前二者を、初期位置では、日本将
棋の金将や銀将のように小駒に変え「その列で最前列に出て、し
かも2番目の駒との段差が2段以上(前の前の升目)になったら、
初めて、本来の女王や僧侶に成る」といった、いわゆる、「サッ
カー逆オフサイド成り」のルールを、導入する案を、出した事が
あった。これなら、女王や僧侶が、10升目チェスでも、中段に
配置されるような、中盤の棋譜が生じやすくなるのである。
 ただし、この「中段大穴問題」は、回避の方法がむろん、これ
に限定されるとは限らず、ヒャーシャタルでは、ヒャー駒につい
ての、特別な規則を作り、

味方のヒャーの隣接升目を、女王(シャタルでは虎)、僧侶(同
じくシャタルではラクダ)、城(シャタルでは牛車)等の走り駒
が、通過する確率が大きいため、そこで止まって、先に行けない
ルールが適用される事によって、走り駒が中段に有る棋譜の出現
確率を増やしている

のである。ちなみに相手のヒャー(参謀)の隣接升目へは、相手
のヒャーの利き升目なため、多くの場合、経路が塞がれているの
と、実質同じと考えられる。なお、ヒャーの動きは、先に述べた
ように、大局将棋の白象の動きであるから、隣接升目はすべて、
利いている。
 以上のような状況から、モンゴルに「大きな」シャタルが有る
のは、チェスとほぼ同等のシャタルの升目を一旦増やして、大盤
升目チェスを、最初は気まぐれで、たまたま作ろうとした所、
「中段大穴問題」が発生。その回避策が思考錯誤された結果、
モンゴルでは、その方法が、たまたま発見されてしまって定着し、
すなわち味方走り駒の、休憩地点のような役目をするヒャー(参
謀)駒の発明に至って、大・小シャタルの並存が最近まで続いた、
という事なのであろう。
 何れにしても西洋チェスの大型化は、日本の大将棋の初期の方
法論と同じと、少なくとも私は見ているから、モンゴルのヒャー
シャタルは、日本の大将棋と同系統のゲームと、明らかにいえる
と、少なくとも私は考えている。(2017/02/25)