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中将棋等の横行の成り駒「奔猪」のルールの謎(長さん)

前々回問題にした、普通唱導集の大将棋の時代から大将棋の駒として
存在すると私がした嗔猪と関連する駒で、奔猪という駒がある。
水無瀬兼成の将棋部類抄の、摩訶大大将棋では、嗔猪の成りが奔猪に
なるので、嗔猪と奔猪が元駒と成り駒の関係になる場合がある、という
事である。
 実は、中将棋の成り駒が作られたときに、中将棋に無くて大将棋に
ある嗔猪の成りを、奔猪にするという思考の流れの他に、

横行の成りを奔猪にするという、中将棋のゲーム設計がなされたため、
奔猪は猪に関連性の無い、行駒の成り駒になるという、摩訶大大将棋
の奔猪とは別族の駒が並存する結果になった。

 その結果、動かし方のルールは、この駒だけ2系統できてしまったと
みられ、横行の成り駒としての奔猪は、横と斜めの6方向に走り、
摩訶大大将棋と泰将棋と大局将棋の嗔猪の成り駒としての奔猪は、
前と横の3方向に走りか、前・斜め前・横の5方向に走りと後ろへ一歩
下がれる、等のルールになったと見られている。これは、恐らく嗔猪に、
後ろへ後退できないバージョンが有るのと、関連するのだろう。
 なお、奔猪が中将棋で横斜めの6方向走りになった影響か、大局将棋
の嗔猪が、”横と斜めへ計6方向歩み”に変化したようであるが、その
成り大局将棋の奔猪は、5方向走りと1歩後退で、ちぐはぐである。
理由は私には良くわからない。
 ここで、はっきりそうだとまでは言えないのであるが、中将棋で、

左右にも前後にも対称的な動きの奔猪になっているのは、普通唱導集大
将棋の嗔猪の動かし方のルールが、前後左右一歩で、同様に左右前後、
対称型になっている事の証拠かもしれないと、私は考えている。

理由は、元駒の横行が竪行と、明らかに対になる駒であり、竪行の成り
が中将棋では飛牛、横行の成りが奔猪になっていて、私の普通唱導集大
将棋モデルでは少なくとも、猛牛と嗔猪とは、隣同士だからである。
私は中将棋は、私のモデルの普通唱導集大将棋から作られたと考えて
いるので、中将棋の成り駒名が、私の言う普通唱導集大将棋の駒から
取り入れられるのは、自然と考えている。猛牛の方が嗔猪よりも強い
から、竪走りの竪行の成りが優先して牛駒になり、横行の成りが、猪駒
になったのかもしれないと、私は思うのである。そして、冠詞の飛、
奔は、飛車や奔王から、適宜取り入れたのだろう。
 ところが、飛の方は良いとして、奔の方は、摩訶大大将棋の成り駒の
名前の付け方と、バッティングしてしまった。その混乱が、2系統の、
奔猪となって現れ、結果として、増川先生の本で紹介されている版は、
松浦大六氏所蔵とみられる将棋図式では、摩訶大大将棋の下3段以下
小駒で、

奔駒に成らずに、不成りなのが、嗔猪一種だけという結果になっている

ようなのである。つまり上記将棋図式では、既に中将棋で示した奔猪は、
横行の成りとして考えられたものであって、摩訶大大将棋の嗔猪の成り
としては使えないという、将棋図式の著者の認識があり、また、この
著書の中では、同一駒名・別種将棋で、別の動かし方の駒を作るという
のを、恐らく嫌がった結果、将棋図式の摩訶大大将棋の嗔猪は不成りと、
特別にされたように、私にはこの将棋書を読むと考えられるという事で
ある。(2017/05/14)