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”普通唱導集大将棋を考える事の意味”の数値化(長さん)

前に、普通唱導集大将棋が、後期大将棋と異なる点は、西洋チェス型の
改善を平安大将棋に対して行ったか、私に言わせると後期大将棋のように、
中将棋という言葉を説明するための、形式的なゲームの作成だったのか
という違いである。そのため、後期大将棋は、小駒で水増しされてしま
っているので、攻めに主として用いられる走り駒等の大駒が、中盤で
枯渇してしまい、日本将棋が出現すると、全くゲームとして太刀打ち
できないと考える。このブログでは、上記の趣旨は述べたことがあったが、
数値で示したことが無かったので、今回は以上の事を、簡単な数値で
示してみる。
 各将棋種について、隣接升目にしか動かせない駒を小駒と定義する。
ただし、この定義ではたとえば、桂馬が小駒にならないのに、注意しなが
ら以下考えよう。そこで、「大将棋は、西暦1300年程度の、
普通唱導集の大将棋までは、西洋チェス型の改善が、行われる流れだった」
という事を、示すため、西洋チェスをリファレンスとして、日本の各時代
の将棋の、以上で定義した、小駒の割合をチェスとで比較すと、以下の表
のようになる。

将棋種    一方駒総数 小駒数 小駒外比率(%)
西洋チェス     16   09   44
原始平安小将棋 16   12   25
平安小将棋    18   14   22
平安大将棋    34   25   26
普通唱導集大将棋54   28   48
中将棋       46   26   43
後期大将棋    65   41   37
摩訶大大将棋   96   57   41
日本将棋      20   14   30
中国象棋      16   08   50

なお、細かい事を言うと、摩訶大大将棋の盲熊は将棋部類抄の動きを採用
し、小駒でカウントしている。
簡単な棒グラフで、強い攻め駒割合を、グラフで示すと次のようになる。

小駒外割合.gif

一目して、平安大将棋の後継が、仮に非小駒割合37%の後期大将棋だと
すれば、西洋チェスの攻撃力に届かないうちに、チェスより少し攻撃力が
足らないのを、師子に関する特別規則の作成で補ったと見られる、中将棋
に移行した事になるので、

”大将棋の現代的な意味での存在の意味は薄い”ということになりかねない

と私は考える。だが、普通唱導集大将棋が存在すれば、非小駒の割合は、
西洋チェスを明らかに超えるので、そのオフェンス力は、西洋チェス並み
に、強かった”出来の良いゲーム”という事になろう。
なお、ここでは、普通唱導集大将棋は、酔象がチャンチーの象で2走り駒
で非小駒、また同じく2走り駒の猛牛を入れて総駒数、108枚(一方に
54枚)のバージョンで、カウントしている。もし3月以前の104枚制の、
旧バージョンを採用すると、約44%となり、やっと西洋チェスに届く数
値になるだけである。だが、108枚制だと、酔象も猛牛も非小駒なので、
数値上は、楽にチェスを越える。
 なお、上のグラフで言うまでも無い事かもしれないが、現代日本将棋は、
非小駒割合30%と、西洋チェスより、ずっと低い。が、持ち駒ルールで、
それを充分に、挽回しているのである。また、中国象棋は、数値上では、
西洋チェスおよび日本の将棋より、非小駒割合が高いが、この将棋のこの
数値は、言うまでも無いかもしれないが、兵駒を4枚減らした結果こうなる
のであり、特別である。実際にはチェスの女王や僧侶にあたる、強い走り
駒が無いため、中国象棋の攻撃力は、そのままではチェスより劣り、9宮に、
玉駒の動きを封じ込める事によって、ディフェンスを弱くして、ゲーム調整
したものと考えられる。
 何れにしても、”普通唱導集に唄われた大将棋は、後期大将棋ではない”
という事が、より直接的に示されないと、西洋チェス型駒数多数将棋が、
本来の日本の昔の駒数多数将棋だという事にならず、日本で大将棋系列
の再興は困難であろうと、私は見ている。
 何か良い史料が見つかるか、既存の史料の研究がより進むか。遊戯史の
発展をただただ祈るしか、今の所無いように私には見える。(2017/05/19)