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水無瀬兼成が泰将棋の駒ルールを、他将棋種と大変更したのは何故か(長さん)

たまたまだろうが、web上で公開しされている泰将棋の駒の動かし方の
ルールについて、水無瀬兼成オリジナルの、将棋図、将棋部類抄に書いて
ある内容が、紹介される事は、実はほとんど無い。ただ現実には、島本町
教育委員会編の冊子・象戯図の、水無瀬兼成将棋部類抄の巻物の、泰将棋
の駒に付けられた打点を見る限り、内容は、

だいぶん気になるほど、一般の、別の古文書に基づくルールとは違うもの

である。実は、将棋部類抄に限定しても将棋種により、同じ駒のルールが、
かなり違うのである。そこで以下、

泰将棋が、そもそも美術品だったからだろう

という仮説から出発して、
他の将棋種の、同じ種類の駒の動かし方と、泰将棋・水無瀬バージョンの
差を、幾つかの項目について、比較してみる。まず、項目1・2として、
1つの駒に、何種の動かし方があるかを比較する。

以下の項目1では、明らかに水無瀬兼成将棋部類抄の泰将棋では、簡素化
をめざしているように思え、項目2についても、弱いながら、簡素化する
傾向があると言う結果になっている。
理由は、この図を見る人間が、神経を使わなくても、内容が一目把握しや
すく、満足感が味わえるように、配慮しているから。つまり殿様に献上する
ための図であるから

のように、私には思える。
では、以下具体的な調査内容を示す。

項目1:方向により、動かし方の種類に差がある場合で、8方向で3種類
以上、動かし方形態に、種類数があるはずの駒について、泰将棋・水無瀬
バージョンでも3種類以上になっているのか、どうか。
(結果)
なお①~④は、何れも3種類から2種類へ減少する例である。
①白虎:歩み、踊り、走りがあるはずだが、水無瀬泰将棋では歩みと走り。
②大龍:(無変化)踊り、3踊り、(3跳び)走りがあるはずだが、水無瀬
 泰将棋では、前後3踊り、斜め走りの大局将棋に似たルールになり、2種
 類。ただし、大大将棋の水無瀬バージョンとは同じなのでカウントとして
 は、無変化扱いになる。
③金翅:(無変化)踊り、3踊り、走りがあるはずだか、水無瀬泰将棋では
 踊りと3踊りが全部3踊り。結果2種類。ただし大大将棋水無瀬バージョ
 ンとは一致。大龍と同じパターンである。
④青龍:歩み、踊り、走りがあるはずだが、水無瀬泰将棋では歩みと走り。

(なお3種類以上を、3種類以上のままにしたケースは、見当たらない。)

項目2:同じく方向により、動かし方の種類に差がある場合で、8方向で
2種類、動かし方形態に種類があるはずの駒について、泰将棋・水無瀬バー
ジョンでも2種類になっていないものの、状態。
(結果)
①力士:歩みと3踊りの2種類が、水無瀬泰将棋では3踊りだけに減少。
②金剛:歩みと3踊りの2種類が、水無瀬泰将棋では3踊りだけに減少。
③麒麟:歩みと跳びのはずだが、水無瀬泰将棋では跳びだけに減少。
④鳳凰:歩みと跳びのはずだが、水無瀬泰将棋では跳びだけに減少。
⑤東夷:歩みと跳びのはずだが、水無瀬泰将棋では歩みだけに減少。
⑥左車:摩訶大大将棋では左に歩めるはずだが、泰将棋では走り1種類。
⑦右車:摩訶大大将棋では右に歩めるはずだが、泰将棋では走り1種類。

なお、龍王、龍馬、鳩槃、奔鬼、猛鷲、毒蛇、飛鷲、横龍、羅刹、夜叉、
盲熊、猛牛、羊兵、孔雀、古鵄、行鳥、角鷹、南蛮、北狄、西戎、
水牛、踊鹿、前旗、猛熊、堅行、横行、驢馬、馬麟、き犬の、ざっと以上
29種は、動き自体が変化するものも多いが、動かし方の種類数については、
2種類のままである。

また、以下の反例が有る。尚①~⑤は1種類が2種類に、逆に増えるケース
である。
反①天狗:(ただし他の文献と同じ)大大将棋では角行2回だけのはずだが、
他の文献と同じく、泰将棋では、縦横に歩めるようになる。
反②盲猿:歩みだけのはずだが、水無瀬泰将棋では斜め前と横が踊り、斜め
後ろが歩みの2種類に増加する。
反③鉄将:歩みだけのはずだが、水無瀬泰将棋では跳越え(?)と、歩みの
2種類に増加する。
反④木将:踊りだけのはずだが、水無瀬泰将棋では前歩みと、斜め前踊りの
2種類に増加する。
反⑤変狸:踊りだけのはずだが、水無瀬泰将棋では斜め踊りと、前後走りの
2種類に増加する。
反⑥奔獏:2種類が3種類の例。5踊りと走りのはずだが、水無瀬泰将棋では、
 後ろが3踊り、斜め後ろが不行となる。つまり、3踊りと5踊りと走り。

次に、以下の項目3についても比較する。

以下の項目3で、水無瀬兼成の泰将棋では、走り駒等、類似のルールの駒を
集める傾向があり、盤駒が美術品として美しいだけでなく、この泰将棋の
将棋図も、線のマークが適度に規則的になっている事によって、抽象(?)
絵画としても、美的に見栄えが、より良い物になる効果を、作者が、最初
から狙っている

ようにも見える。
では具体的に、調査内容を以下に示す。
項目3:互いに3つ並んだ駒が本来、走らず・走り・走らず、か、
走り・走らず・走りのはずが、走らずだけや、走りだけ、その他それに類す
る変動が起こって、いないかどうか。

①飛車・鳩槃・天狗:本来、走り、踊り、大走りだが、水無瀬泰将棋では、
走り、走り、大走りになっている。鳩槃の動きは、大局将棋に類似である。
②猛牛・羊兵・白駒:本来は、踊り・走り・走りのはずだが、猛牛が走りに
なったため、3枚とも走りである。
③変狸・馬麟・き犬:本来は踊り、踊り、走りのはずだが、変狸と馬麟が
走りとなったため、3枚とも走りである。

反①銅将・鉄将・瓦将は、鉄将が跳び越え等の不明な動きになっているため、
従来の歩み・歩み・歩みかどうかは不明。

以上の事から、水無瀬兼成の将棋部類抄の泰将棋のルール図は、島本町教育
委員会のバージョンしか、今の所チェックしていないので、確定的とは言え
ないが、

情報の正確さや、過去の将棋史の情報の内在は、もともと期待薄であって、
水無瀬兼成にとっては、内容の体裁を整え美術品としても価値が有るように
する事に、主眼があった

と疑われるものであると、私には思われた。(2017/10/29)

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