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なぜ麒麟の動きのルールが鎌倉中期に考え出せたのか(長さん)

 現在中将棋で、麒麟のルールは、縦横に1升目跳び、斜めに歩み
となっている。普通唱導集時代の仮説108枚制大将棋を取ると、
26種類の駒の動かし方ルールで、跳びと歩みが混合する例は、
麒麟と鳳凰の2種類、走りと歩みが混合する例が龍王と龍馬の二種類
であり、動きのルールとして複雑である。なお130枚制の後期大将棋
では、獅子が改善されれば同種類なので、跳びと歩みが混合する例は、
麒麟、鳳凰、獅子の3種類となる。何れにしても、麒麟は、跳びと歩み
を混合させる、最初の例のはずである。
 実は、話を更に判りにくくして、たいへん申し訳ないのであるが。
本ブログでは、前に結論だけ述べた事があるが、

麒麟の当初ルールを、”跳びと歩みの混合する駒”と、見て居無い。

麒麟は、平安大将棋の猛虎の動きを2回まで繰り返せるが、2回目は
必ず90度曲がって動かなければならない”踊り駒”

と、見ているので有る。つまり、

麒麟は常識的に考えると、考え出すのが、今よりもいっそう難しい駒

と見ていると、言う事になる。こう見るのは、ついでに鳳凰を、跳びと
歩みの混合駒ではなくて、シャンチーの象・相の斜め動き、つまり弱い
走りと、縦横歩みの、走り・歩みの混合駒というふうに見ている事に、
関連している。つまり発生した、鎌倉時代には、図として書くと、麒麟
と鳳凰は、45°回転させると対称的な動きの駒のように見えるが、そ
の実かつては、動かし方のルールが、互いに、かなり違う駒だったと、
本ブログで独自に考えているのである。そしてこのように、いっけん
ヒネクレて考えるのは、

麒麟の成りの獅子と、鳳凰の成りの奔王が、全く対称的になっていない
事が、もともとの麒麟、鳳凰のルールを、踊り駒と、走り主体の駒の
別種族と考えると、旨く説明できるため

である。そこで、麒麟が平安大将棋の猛虎2回の動きで、2回目は必ず
曲がるというのが、元だと言うのが正しいとして、こんなヒネッたルー
ルを、なぜ鎌倉時代の中期に発明できたのかを、次に考えてみる。今回
は以上が論題である。だいぶん前置きの説明が長かったので、今回は、
ここでようやく結論が書ける。そこでこれが何故かと言うと、西暦

1300年頃に成立していたと見られる、108枚制の普通唱導集大将
棋で、麒麟が猛虎の隣にあり、猛虎自体が、性能の悪い駒だったため、
それを挽回しようと、頭をヒネッたあげくに、必要は発明の母の例え通
り、麒麟が、初期の”珍しいルールの踊り駒”として発明できた為

だと私は考えるのである。
 そもそも、猛虎のように斜めに歩む駒は、玉将周りを手薄にするため
に玉将近くに置くべき駒である。しかし、猛虎の場合、玉将から若干離
れた銀将の前の升目に置かれている。そもそも、玉将のディフェンスを
全体として弱くしたいのなら、金将を玉将の隣に置いてはだめである。
これでは、猛虎が存在する事自体が、意味不明になるからである。
しかし、実際には、無駄駒として猛虎が存在する。猛虎は調整された
守り駒でも無ければ、攻め駒にもならない、平安大将棋では、ゲームと
しては

猛虎は存在自体が、ほとんど意味が無い駒

なのである。この点は、駒の初期の置き方の骨格を変えないとすれば、
普通唱導集時代の大将棋でも、事情は同じであった。だが、普通唱導集
の大将棋の骨格を、その普及のためには、二中歴記載の大将棋と、替え
る事は出来なかった。ので、普通唱導集大将棋のゲームデザイナーは、
猛虎の隣接部分に、猛虎の強力な改良駒を置くことを、考えたのだろう
と私は見る。なお、改良方法としては、

縦横のどこかにも歩める、5方向程度の銀将型の歩み駒に、猛虎を変え
るというのが、最もポピュラーだが、猛虎2回の動きという駒でも、
盤面の半数の升目に行き所が無いものの、動きは速くなって、比較的
攻め駒として有望なのに、試行錯誤で気がついた

と、私は推定するのである。その結果”平安大将棋の猛虎2回動きだが、
2歩目は90°曲がらなければならない”という、原始麒麟の駒ルール
が、完成したのではないかと、私は推定する。
 なお、このタイプの動かし方は、江戸時代になると普通に考え出され
るようになった。広将棋の虎翼や天馬がそうであるし、松浦大六氏所蔵
象戯図式の、天竺大将棋の奔鷲の斜めからの”猫叉二回の動き”がそう
である。

しかし、平安大将棋に関しては、猛虎の、あまりにも存在の意味自体が
不明という、危機感というマインドが、鎌倉時代中期という、それよ
りはるか以前にも、奇跡的に、同種の繰り返し踊り駒を、たまたま生み
出したのではないか

と、私は推定するのである。なお麒麟の、この元々の動きは、猛虎を
王将に入れ替えて、麒麟自体の成り駒である獅子の動きを、自然に生み
出したと私は、当然だが推定している。そして、その獅子の踊り動きで、
1歩目の自分の駒も、跳び越えられるように改良された時点で、恐らく、
麒麟の縦横、結果としての1升目跳ばした位置への移動が、ジグザク
踊りの結果ではなくて、普通に跳んで行けるようになった。そして、
鳳凰の斜め動きが、麒麟の影響で、シャンチー象走り(塞馬脚有り)か
ら、単純跳びに変化して、かつ踊らずに確定いた。すると、今度は又、
麒麟がその更なる影響で、ジグザグ踊りを、消滅させたのであろう。
かくて、麒麟と鳳凰は、45°回転させると、現在のように同じ動きの
駒になった。

ただし、そのようにして、麒麟と鳳凰の動きの関連性が高くなっても、
成りは、それぞれ踊りの獅子と、走りの奔王とが、対応付けされ続いた。

以上の経緯を仮定しさえすれば、麒麟・鳳凰の現在の、少なくとも中将
棋のルールは、ぴたりと説明できるように、私には思えるというわけで、
麒麟の動きのルールの謎が、以上で一応説明できたと言う訳なのである。
(2017/11/30)

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