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水無瀬兼成将棋纂図部類抄、中将棋図後の矛盾した獅子のルール説明(長さん)

安土桃山時代の将棋のルール書、水無瀬兼成の将棋纂図部類抄の中将棋
の図の後部分に、中将棋で注意すべき駒のルールをまとめたと見られる、
注意書き部がある。その中で、獅子のルールに関する説明が2回出てくる
のだが、いっけんして、互いにちぐはぐになっている。すなわち、

第1箇所目には「獅子は居喰いができ、(玉の動きで踊りが出来て、)
1升目動き、2升目動きができる」との全般ルール解説がなされている。
しかし、

第2箇所目には「一説によると、獅子は居喰いができるという」と書いて
ある

のである。つまり、第1箇所目で、居喰いが出来るのが、ルールとして
確定していると書いてあるのに、第2箇所目には、それはローカルルール
であると、書いてあると言うことである。つまり、全体として、獅子が
どういう動かし方のルールになっているのか、意味不明という訳である。
 前回、獅子は中将棋が成立するとまもなく、将棋纂図部類抄、中将棋
注釈の、上記第1箇所目に書かれたように、ルールは、確定したのだろう
と述べた。でないと、中将棋は流行らないはずである。にもかかわらず、
第2箇所目は、何を言わんとして、それがローカルルールであるように、
将棋纂図部類抄には書いて有るのだろうかと言うのが、今回の論題である。
 そこで、まずいつものように、回答を書く。
摩訶大大将棋の獅子のルールに関して、将棋纂図部類抄では、①行然和尚
まとめ表と、②摩訶大大将棋口伝で、狛犬のルールの所で言及しているので
あるが、獅子は居喰いができるように、書いてないため、水無瀬兼成自身
が、中将棋~摩訶大大将棋までの獅子のすべてに関しては、獅子が居喰い、
正確には、後戻りの動きができるかどうか、把握できてい無い事を、
第2箇所目で表現していると私は考える。ようするに、判りやすく言うと、

第1箇所目の獅子のルールは中将棋の獅子の説明、第2箇所目の獅子の
ルールは、大将棋や摩訶大大将棋の獅子のルールの説明だと考えると、
言う事

だと言う事だ。第2箇所目の説明の後に”鳳凰や仲人等、中将棋の駒の動か
し方のルール(の総体)は、(よって)大将棋のルールを持ち込んだもの
である”と、書いているのは、それと韻を踏んだ表現なのだろうと、私は思
っている。
 さて、以上のように考える事が出来るのは、①行然和尚まとめ表では
「獅子は16方向に動いて行く」という表現をしている為に、停滞したり
後戻りの動きが出来るかどうか、謎だし、②摩訶大大将棋口伝では「獅子
は不正行度する」と、説明しているが「不正行度」の言葉の説明を、さっ
ぱりしていないので、ジグザグには動けそうだが、居喰いや後戻り動きが、
後期大将棋や摩訶大大将棋でできるかどうか、水無瀬兼成にも判断不能なの
であろう。ようするに、

中将棋図後の部分の、「注意すべき駒のルールの説明部分」については、
将棋纂図部類抄という文献の範囲での、問題の議論のように見えるため、
水無瀬兼成自身によるルール解説部分であって、1443年写しとされ
る曼殊院の図には、もともと無かったのであろう

と、私は推論する。従って、第2箇所目の”ある説”は、常識的に
見て、かなり確かな説のように、私には見える。が、水無瀬兼成自身も、
獅子は折れ曲がって動くことは出来るものの、後期大将棋の成立時代に、
中将棋を指す時には出来る、後戻りまでが出来たのかどうか、彼自身も、
つかめなかったと、白状しているという事なのだろう。(2017/12/01)

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