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朝鮮広将棋の初期配列はwikipedia外国版で紹介されている(長さん)

前に、岡野伸氏の自費出版書”世界の主な将棋”(1999)よりの情報
として、14段×15筋の朝鮮広将棋が、高麗国の頃より有り、雷淵集に
記載があるという話を、本ブログでも紹介した。ただし、雷淵集自体が、
現在の北朝鮮の文献らしく、それ以上の情報の無い、少なくとも本ブログ
では謎のゲームであった。
 しかるに最近、wikipediaの外国版に、その雷淵集の朝鮮広将棋
の、18世紀に於ける初期配列が紹介されているのに、検索していて私は
気がついた。それによると初期配列は、次のように記載されている。
 各6段組で、上の方が相手側の43枚の駒、下の方が自分の駒である。

十十十游十十十前十十十游十十十
車仕象十車象仕十仕象車十象仕車
十将十奇十十十帥十十十奇十将十
砲十馬十十馬砲十砲馬十十馬十砲
十十十伏十十十後十十十伏十十十
騎騎騎十歩歩歩十騎騎騎十兵兵兵
十十十十十十十十十十十十十十十
十十十十十十十十十十十十十十十
歩歩歩十騎騎騎十兵兵兵十騎騎騎
十十十伏十十十後十十十伏十十十
砲十馬十十馬砲十砲馬十十馬十砲
十将十奇十十十帥十十十奇十将十
車仕象十車象仕十仕象車十象仕車
十十十游十十十前十十十游十十十

朝鮮広将棋初期配列(駒は交点置き)

なお、上の図で、”兵”は”歩”と書かれているが、チャンギ系は横にも
歩めるケースがありうるので、”兵”に私が直した。十には駒は置かない。
”仕”は実際には”士”と書かれているが、上では見難いため変えている。
ちなみに、岡野氏の世界の将棋で記載されている、”中軍”とは、中央筋、
第3段の帥駒を中心とする、9筋5段の駒のうち、内営から出られないと
見られる、帥と仕を除いた残りの、進軍できる駒を指すと見られる。その
領域をwikipediaでは、赤い線で囲っているように見える。また、
”上軍”は、それに比べてはっきりとはしないが、袖の”将”を中心とす
る隣接9升目に在る駒や、6段目の駒を指すのかもしれない。なお、
そこにも仕があるが、チャンギ系のゲームなので、将と将の後方隣の仕は、
ひょっとすると自由に、相手陣まで動けるのかもしれない。また”将”は、
恐らく玉駒では、無いと、みられる。
 なおwikipediaの今紹介したサイトは、広将棋の英訳である、
”Gwangsanghui"という語句で、容易にヒットする。
 そこで、そのサイトを見てもらえれば判ると思うが、wikipedia
外国版の、朝鮮半島の古将棋(チャンギ類)の説明に有るように
”朝鮮広将棋については、駒の動かし方のルール等、詳しい事は、欧米
でも良く判っていない”とされる。
 とは言っても、この14段×15筋86枚制朝鮮広将棋の、駒の動かし
方で、幾ら考えても判りそうも無いもので、かつ重要なのは、帥・将し同じ
段に有って大駒っぽい、”奇”位なのではなかろうかと、私は思う。
 そもそも、中国シャンチーと同じ名前の駒は、玉駒が八方動きのチャンギ
系、象がチャンギの象であるのは別として、同じと見てよかろう。
 蛇足だが、朝鮮広将棋の作者は、特に玉駒を漢・楚には、変えなかった
ようだ。
 また、騎、前、後は、七国将棋の騎、荻生徂徠広将棋の前衛、後衛に、
近いのではないか。また、ひょっとすると”游”は七国将棋の行人と、同じ
ルールなのかもしれないと思う。”伏”は、あてずっぽうだが、試しに
大局将棋の、”雨龍”の動きにしてみると、良いかもしれない。すると、
獅子の動き等、何か、特殊な動きをすると、懸念されるのは、”奇”位では
なかろうか。なおチャンギ系の象棋であるから、たぶん皆、成らないと思う。

 この程度の駒数であれば、復刻も、さほど困難ではあるまい。

 何れにしても、この将棋が、たとえば日本の

 後期大将棋に、あんまり似て居無い事は、どうみても確か

だと思われる。また、はっきりした記録が、日本の江戸中期、荻生徂徠の
広将棋の成立期と、同じ頃のものしか残って居無い事から、曼殊院文書
に記載された、各種の日本将棋に影響を与えたとの、確たる証拠は、無
くなってしまった。
 恐らく、新安沖沈没船の、15×15升目将棋盤(?)の時代には、
朝鮮広将棋は、ひょっとするとまだ、確立もされておらず、有ったとして
も、全く別系統のゲームなため、日本の駒数多数系将棋への影響度も、
江戸時代の古文書の予想とは違って、実際には低いのではあるまいか。
 やはり、新安沖沈没船の、15升目盤が意味するのは、
大将棋が15升目程度の朝鮮広将棋の仲間であるべき、という主張ではな
くて、15升目の盤の、5段目外の線に聖目を書いた遊戯盤は、見栄えが
よいので、

一般にその程度の升目を必要とするボードゲームは、できれば15×15
升目盤でするべき

という、中国元朝時代のゲーマー達の主張のコピー、なのではないかと、
私は推定するのである。(2018/01/25)

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