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9×9升目46枚制金上の猛豹追加朝倉小将棋(持駒有)のチェック(長さん)

前回までに、9×9升目制のいろいろな、持駒有り型の将棋について
考察した。その中で、太子成り酔象の有る朝倉小将棋は、持ち駒ルー
ルを単純に仮定しても、双方攻めきれずに、引き分けの多い、難の
ある将棋になる事が、実際にも明らかとなった。そのため、持ち駒ルー
ルの禁手を、全部撤廃して、攻撃側を有利にするような、改良を加え
てみた。結果は、良い方向に行くことが判った。
 この結果で、私は次の事に気が付いた。

猛豹は、中将棋の駒を、そのまま取り入れるとすれば、角行成り猛豹
の形で取り入れる。ので、酔象入玉将棋の局面では、角行を双方2枚
づつ取り入れるのと、それはほぼ、同一効果が得られるはず

である。
つまり、以前”取り捨てルールで存在するかもしれない”と、本ブロ
グで指摘した、”象棋百番奇巧図式”の林信充記載の、9×9升目
46枚制の猛豹・酔象追加日本将棋でも、入玉状態の相互太子のある
局面は、持駒ルール有りでプレーすると、引き分け等にせずに、打開
できるかもしれないという事である。
 そこで今回、”象棋百番奇巧図式”の林信充記載の、以下の初期配
列の将棋を、実際にチェックしてみた。
すなわち、問題の将棋の初期配列は、以下のようになる。

三段目:歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵歩兵
二段目:口口角行口口猛豹酔象猛豹口口飛車口口
一段目:香車桂馬銀将金将玉将金将銀将桂馬香車

また、成ると各駒は、次のようになる。
三段目:金将金将金将金将金将金将金将金将金将
二段目:口口龍馬口口角行太子角行口口龍王口口
一段目:金将金将金将不成不成不成金将金将金将

成りの条件は、日本将棋と同じ。そしてこの将棋については、持駒ルー
ル有りとし、持ち駒を打つ際の

禁手も、日本将棋と同じに戻してみた。

つまり、二歩、行き所の無い場所への桂馬、香車、歩兵、その手で詰む
手での歩兵は、打てないとした。また、前と同様、玉将は打てないが、

酔象、猛豹は打てるとする。

実際に、これでゲームをしてみると、入玉し相手陣の最奥に逃げたつも
りの太子が、しばしば、

成り猛豹の角行、龍馬、斜め後方に進める銀将、必要なら更に持駒と
なった金将等で、吊り上げられて、潤沢に持ち駒が存在する局面なら、
詰む展開になり得る

事が判った。つまり、

猛豹が角行に成るおかげで、盤面に、最大で攻め駒が4枚の角行分増え、
守備過剰な状態が、かなり改善される

と、言う事である。
 この結果から、少なくとも1755年当時も含めて、それ以前に、

9×9升目46枚制金上の猛豹追加朝倉小将棋(持駒有)は、将棋御三
家や、一般将棋棋士等の研究者により、念入りにチェックされた疑いが、
かなり強い

と、私には思われた。”詳しく”の程度が問題ではあるが、基本的に

林信充の”詳しく考えた者は居無い”との旨の、記載はウソだ

と、私は見る。なお、たまたまだろうが、中将棋の角行成り猛豹は、未
だはっきりとした、出土例は無かったと記憶する。従って、一乗谷
朝倉氏遺跡等で、46枚制が、盛んには指されて居無い事は、ほぼ確か
であろう。しかし個人的印象では、この将棋はゲームとしては、充分成
立すると思われる。ので、かつて、

日本将棋連盟が、この将棋を古い時代の小将棋の例として、
日本将棋連盟編「将棋入門テキスト(指導者用)」の「将棋の歴史」
<古式の小象戯>に加えた事自体は、出所を明らかにしさえすれば適切

だったと、私は判断する。そもそも詰め将棋の本の、著者クラスの者が、
”ちょろ角銀攻め”で、46枚制小将棋の”底に落ちた太子が、詰むか
どうか”を、”誰も詳しく考えた者がいない”とも思われない。ので、
林信充の問題の序文は、この将棋が、徳川家治の時代より少し前の、江
戸初期に考え出された、近世の物である事を、示しているのかもしれな
い。すなわち、作者が、大橋家かその分家か、伊藤家の者であるという、
”誰もが、詳しく詮索する事の許されない、宗家に隠されたゲーム・デ
ザイナーの特定情報”の存在を示唆するための、婉曲的な言い回しなの
かもしれないと、言う事である。(2018/03/25)

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