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天竺大将棋の駒の格。いつ発明されたのか(長さん)

現行伝承されている天竺大将棋の駒のうち、玉駒と跳び越え駒に関
して、相手の跳び越え駒で跳び越えられたり、そのときに取られた
りしないように、玉駒と跳び越え駒と、その他の駒とで、跳び越え
駒による、跳び越え取りの手のうちの一部に、禁止手を付与すると
いう差別を目的とする、駒の格という、特別な禁手ルールのための
用語が存在する。つまり、自他共に、格下の駒は、跳び越え駒は、
跳び越える事ができるし、そのとき相手の駒は、取る事ができるが、
跳び越えたり、そのとき取る駒が、同格ないし格上だと、跳び越え
と取りが、どちらも特別に、禁止になると言う事である。なお、
直射取りする手には、こうした制限は無い。
 具体的に、駒の格が特別な、駒種類を書くと、天竺大将棋では、
玉将、太子、大将、副将、飛将、角将を、他の駒よりも、格上と
するものである。なお、格上駒系列に、奔鷲は入って居無い。
 これらを1ランク上に、しさえすれば良いような気もするが、実
際には、上記の6種類の駒を、2、1、1、2と分けて、ABCDクラスと
し、残りをEクラスにするという、より複雑な事になっている。
 そこで今回は、この跳び越え駒の、跳び越え取り制限ルールが、
何時の時代から、誰の発明によって存在するものなのかを、論題に
してみる。
 回答を何時ものように先に書くと、

20世紀後半というごく最近になり、恐らく「世界の将棋」
-古代から現代まで-の著者の、梅林勲氏により作成されたもので
あろう

と本ブログではみる。ひょっとすると、梅林氏ではなくて、その
知人のゲームデザイナーが、作成者なのかもしれないが。
 次に根拠を述べると、
 将棋天国社(1997年)の「世界の将棋」梅林勲氏著書まで、
天竺大将棋の駒の格についての史料が見当たらない。しかし根拠と
してはそれ以上に、本ブログが以前示したように、天竺大将棋には、
火鬼を、水牛類似の走り駒の系列にしたままでは、先手があまりに
有利という点で、近世・近代に於いて、日本人の棋士に、まともに
指された事があるとは、到底考えにくいゲームであるという点が、
挙げられる。つまり、誰かが

火鬼問題をさておいては、最初からだめなものを、熱心にルール
調整する、動機付けが、そもそも基本的に見当たらない

と、私は考えるからである。つまり「世界の将棋」の著者の梅林勲
氏が現われるまで、オリジナルの、駒の格が無いルールのままで、
天竺大将棋は、誰にも相手にされずに

放置されているという姿が、自然なゲーム

だと、私は考えているのである。
 そこで以下、今述べた事を多少補足説明する。すなわち江戸時代
の初期、元禄の頃に天竺大将棋が出来ると、まもなく諸象戯図式に
は、中将棋の拡張ゲームとして紹介された。また、象戯図式が筆写・
加筆されるときに、天竺大将基として、太象戯と、太太象戯の間に、
挿入記載されるようになった事は、これらの文献から見て確かであ
る。しかし江戸時代の

これらの文献に、駒の格のルールは、記載されて居無いと認識する。

後者は増川宏一氏著書、ものと人間の文化史23-1、将棋Ⅰ(1
977年)の松浦大六氏書写の象戯図式には、明らかに載って居無
いし、前者については、公文書館で10年位前に、私は見た事があ
るのだが、諸象戯図式には、天竺大将棋を含めて、各将棋の初期配
列図に、行き方の線や点が、引いてあったという記憶以外に、私に
は、何かの情報があったような記憶が無い。残念ながら、現在私の
手元に、諸象戯図式が無いので確定しないのだが、恐らく

諸象戯図式は、ルールを図示しただけで、より詳しい内容について
記載された書籍では、無いのではなかろうか

と、今の所認識する。
 その後、将棋天国社の、「世界の将棋」が発行されるすこし前こ
ろ、個人的に、梅林氏等と、書簡のやりとり等があったらしい、
C.P.Adamsが、世界の将棋と同等のルールの、天竺大将棋
の解説本の電子版を、1999年に発表している。が、そのほかに、

天竺大将棋の情報記録は、近世現代を含めて「世界の将棋」以外に
は、余り無いのではないか

と、私は疑っている。
 従って、

天竺大将棋の駒の格ルールは、梅林勲氏の「世界の将棋」が初出

である可能性が、依然かなり高いと私は見る。ので、

近代のごく最近になって、発生したルールである

と言う説を、今の所、完全に否定は出来ないのではないかと、私は
疑っている。繰り返すが、

この将棋はもともと、火鬼が水牛型の走りである点が、難であるた
め、中将棋系に強いゲーマーには、簡単に見捨てられる可能性が、
すこぶる高い。

そのため、天竺大将棋というゲームには、

特に研究熱心な梅林勲氏にしか、最初から相手にされないと推定

されるという、かなりの、もっともらしさが、もともと存在すると、
私には思えるのである。(2018/06/11)

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