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栃木県小山市神鳥谷曲輪遺跡北端八号井戸の南東10m出土墨書瓦(長さん)

表題のように、前に本ブログで報告した、栃木県小山市神鳥谷曲輪遺跡の
北の端の方の土壙(つちあな)から、墨書瓦が出土しているとの記載が、

神鳥谷曲輪遺跡の調査Ⅰ(第2分冊)にのみ記載されている。

なお、神鳥谷曲輪遺跡の調査Ⅰ(第1分冊)は、より配布数が多いが、
こちらには、今回問題にする墨書瓦の事は、

全く書いていない。

この墨書瓦が重要なのは、この墨書瓦の地点から北西10mの、同じく
発掘地帯の北端の8号井戸から出土した、摩訶大将棋用?の駒、
裏一文字金角行駒同様、

文字が書いてあるという点である。

その他、道路遺構の各地点から、墨書瓦がこれとは別に3枚出土している
と、神鳥谷曲輪遺跡の調査Ⅰ(第1~2分冊)に書いてあるが、この3枚
については、絵かまたは、少なくとも私には、読めない文字である。
 それに対して、今回問題にする、第12番の土壙(つちあな)からは、

”宮内”と、明確に読める字のある、墨書瓦が出土

していると、最近入手したばかりの第二分冊で、私は読んだのである。
 そこで今回は、さっそく、この事が何を意味するのかを、論題とする。
 最初に結論を書くと、

神鳥谷曲輪遺跡の発掘地点のうち建築物3~4軒跡の北側から、天満宮か
らみの宝物(のうち、価値が低くて盗難される事も無かった物品)が出土

していると、少なくとも本ブログの見解では考える。つまり、元々

南北朝時代の遺物であるにはあるが、室町時代~江戸時代まで、”宝物”
として、天満宮や、小山市の廃尼寺ないし、男寺の青蓮寺で保存されて
いた物品が存在する

と見られると言う事である。
 では以上について、以下にもう少し詳しく述べる。
 第12番の土壙(つちあな)から発掘された墨書瓦の”宮内”の文字は、
ずはりその地点が、近世ごろには近く(北西40~50m)の

天満宮の敷地内である事の証拠

だと私は思う。理由は個人的に、埼玉県越谷市の新方地区、越谷市大松に
ある、戦国時代には館跡だった寺として現在も存続している、”清浄院”
という寺の道路脇に、無造作に露出して、

”堀内”と書かれた、墨書瓦が転がっていたのを、2017年暮れ頃に、
私は目撃しているから

である。なお、この遺物は拾わずに、私はやり過ごしたが、後日行ってみ
ると、片付けられていた。つまりこの清浄院の”堀内”瓦は、城の堀の中
にある建物用の瓦である事を、中近世に示した瓦なのだが、

人通りがさほど無い場所なので、ごく最近までも地表に、たまたま転がっ
て放置されていただけ

なのだと私は思う。栃木県小山市神鳥谷曲輪の場合は市街地なため、土に
埋もれて居無いと、そこがどのような施設の敷地内なのかを示す、中近世
の墨書瓦が、単に今では、簡単には見つからなくなっただけ、なのではな
いだろうか。
 他方、この墨書瓦が発掘された場所から2~3m南から、中世の小山氏
の館跡とされた、3~4軒の建築物の堀立て柱建物跡の領域となる。

恐らく、小山義政の乱以降は、これらの建物は取り壊されて、一帯は荒れ
た場所となり、それより北の、現小山パレスホテル付近の、現天満宮の日
光街道を挟んで反対側(東側)が、小山市の青蓮寺になった

のではあるまいか。そして、たまたま明治の廃仏運動で、青蓮寺が完全に
廃寺になると、

宝物が、寺の南側でかつ、神鳥谷曲輪遺跡発掘現場の北端に当たる、
”8号井戸”等に廃棄されたあと、井戸が井戸跡になってしまった

のだと、私は考える。こう考えると、8号井戸跡から、瓶だの将棋駒だの、
女性用の下駄だの櫛だの、壊れて居無い曲げ物だの、ほかの地点では、余
り出土しない、”安物の宝物”のような物品が、集中して出土(捨てられ
ている)のが、旨く説明できるような気がするのである。なお、8号井戸
に近接して、10号井戸と11号井戸があるが、10号井戸からは8号井
戸同様、女性の化粧用かと見られる櫛の破片3本が、11号井戸からは、
江戸時代のような平和時に、寺に置いてあるのが、ふさわしいとも思える、
鋤や盆栽のカスが出土している。
 これら、8号井戸、10号井戸、11号井戸出土の物品のうち”平和時
代のもの”の出土理由が、墨書瓦の文字、”宮内”を、天満宮か、その
神社の親分であった、小山市の青蓮寺(廃寺)の境内内の印と解釈すると、
ぴたりと説明できると言うわけである。
 なお、8号井戸の下駄について、神鳥谷曲輪遺跡の調査Ⅰ(第1分冊)
には何も書いていなかったが、神鳥谷曲輪遺跡の調査Ⅰ(第2分冊)には、

履物としての寸法が、”括弧23.4センチ”と載っていた。

だいたい23センチだから、おおかた”小山よし姫(小山芳姫)の下駄”
でも象っているのではないかと、私は個人的には、前々から思っていたの
だが。”大人の女性の履物”でどうやら、見立てに狂いが無さそうだった。

神鳥谷曲輪駒.gif

 また将棋駒の赤外線写真も、第2分冊の方にだけ、載っていた。肉眼で
私が見たイメージと、ほぼ同じ感じだと思えたが、さすがにコントラスト
が付いて、字が読みやすい写真になるものだと、赤外線写真の威力に私は、
痛く感心させられた。(2018/07/16)

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