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玄怪録の中の、岑順以外の象棋話から判る事(長さん)

現在、玄怪録と言えば、宝応将棋が記載された、岑順(小人の戦争)
が、将棋史では著名である。だが幸田露伴の将棋雑考には、玄怪録
の中の、岑順以外の象棋話が実は載っているようだ。露伴によると、
”巴郷の橘園の話”というような題名だそうである。

象棋の器物霊が、龍の肝から龍を魔法で作り出し、それに乗って
去ってゆくという話

のようである。この話が将棋史にとって、何らかの情報を含んでい
るのかどうかを、今回の論題にする。結論を先に書くと、

平安大将棋に飛龍が入る、動機のひとつにはなったのかもしれない
と考えられる。

では、以上について、以下に経過説明をする。幸田露伴の将棋雑考
でしか、現在個人的に私は、”玄怪録の巴郷の橘園”に接していな
い。ので漢文(中国語)を読まなければならず、紹介はごく短いが、
物語内容を正しく解釈するのが、私には困難な状態である。ともあ
れ幸田露伴の将棋雑考の漢文によれば、次のように書いてあるよう
に読める。

巴郷の橘園という所が中国にあって、霜が降りると橘の木に、実が
実ってくるという。そこで、その実の中を開いてみると、老人の姿
をした、3人の象棋の精霊が現われたという。その中の、老精霊の
一人が言うには、「橘園の中にいると、楽な事は商の山の中に居る
事のようであり、いつまでも続く事である。ただしここに居るのは、
不得深根固蔕爾なので不満だ」。その老精霊は、龍の肝を取り出し
て食べると、食べ残しの龍の肝を、生きた龍に変化(へんげ)させ
てしまった。すると三人の老精霊たちは、それに乗って、橘園から
とっとと、去ってしまったということだ。

残念ながら、私には、文中の”不得深根固蔕爾”が解読できない。

”我らにとって本当に大切な何物かが無い”と言っているようにも
とれるが、私には残念ながら、良く判らない漢文である。しかし
何れにしても、この物語では象棋を冠した”精霊”は出てくるが、
ゲームをする話では無いとみられる。龍を食した上に、それに乗っ
て精霊は去っている。この話は、何だか私には良く判らないのだが、

象棋・将棋の器物霊と、龍とは関連していると言っているらしい

と解釈できそうだ。
私が宝応将棋の末裔で、龍が始めて現われる例として知っているの
は、いうまでも無く、

平安大将棋の飛龍

である。他方中国の駒数多数の象棋に、龍駒が入った例が有るのか
どうかは今の所、少なくとも私には良く判らない。が日本の将棋に、
伝来後、中国人好みの”龍”が入り易かったのは、こうした唐代の
文学に、良く龍が出てきた事によるというのは、この例から見て、
いかにも有りそうな理屈だと、私にも理解できる。
 なお、現行日本将棋の駒10種類のうち、成りの新種駒は、龍王、
龍馬の何れも龍駒である。だから幸田露伴流の簡易キーワード解析
をする限り、玄怪録では岑順物語と、今回述べた巴郷の橘園を足し
合わせると、現行日本将棋の裏表駒種に、(伝)牛僧儒作の玄怪録
の物語群は、100%見事に合致する事になっている。(2018/08/25)

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