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なぜ大将棋は西暦1290年~鎌倉末金成を減少させた(長さん)

本ブログによると、西暦1290年頃までは、普通唱導集
大将棋の成りに、二中歴の”誤写末備十文字”のルールが
適用され、一段目と歩兵列、反車と仲人が金成りだったと
推定されている。なお、酔象が太子、麒麟が獅子、鳳凰が
奔王に成るのは、いつもそうだったと、今の所は見なして
いる。そして、西暦1333年の鎌倉最末期の少し前程度
に、鶴岡八幡宮境内出土駒の不成りの香車と、楷書の奔王
に成る鳳凰が、出土している事から、ずっと後代の、
水無瀬兼成が将棋纂図部類抄で記した、”成りは酔象、
麒麟、鳳凰の3枚”に近い、普通唱導集大将棋鎌倉末型の
成りパターンになったと、基本的に考えている。すなわち、
鳳凰の成りが、”楷書”の奔王という字なのは、成りが、
奔王に成る鳳凰についてだけ裏が、無地なのか、裏をオモ
テと誤認しており、その駒は鳳凰なのかに、駒を箱から取
り出して盤に配列するときに、この駒一枚にだけ注意すれ
ばよく、駒並べに苦労が無いので、楷書だったと解釈した
からである。よって普通唱導集大将棋の成りは、
西暦1290年から1333年の間に、成り金の数につい
ては、減少した事になる。そして本ブログでは、少なくと
も今まで、その理由に言及した事は無かった。
 そこで今回は、この鎌倉時代後~末期の、大将棋に於け
る成り金数の減少の、原因についてを論題とする。
 回答を最初に書く。

富豪気分に浸りたいので、貴族が普通唱導集大将棋の道具
を所持するだけの傾向が強まり、9升目36枚制標準平安
小将棋(持ち駒型・成り敵陣移動の毎随時型)の、下世話
だが、自分も一応所持している将棋具と、駒を区別したい
ので、大将棋については、将駒等が不成の用具が好まるよ
うになったため

と考える。
 では、以下に説明を加える。
 普通唱導集大将棋は西暦1300年の時点で、急戦調で、
定型の定跡で、勝負が付くと言う事が明らかになっていた。
 そのため、将駒や桂馬が敵陣で成って活躍するケースは
減少し、香車、反車も金成りしたとしても、成り麒麟の
攻撃手だけが、終盤指されるため、香車、反車が成った
効果はほぼ無く、結局

一段目駒と反車が金成りする必要が、ほとんど無くなった

と見られる。そのため少なくとも、一段目駒等が金成りす
る西暦1290年タイプの普通唱導集大将棋の将棋駒具に、
それをしない、鎌倉末型に対する優位性は無くなった。
 そもそも普通唱導集大将棋が、このような状態だったか
ら後深草天皇を含む貴族も、鎌倉末には大将棋だけでなく、
9升目36枚制標準平安小将棋(持ち駒型・成り敵陣移動
の毎に随時型)用の道具を、両方持つようになったと考え
られる。
 すると、金将、銀将、桂馬、香車が、両方引っ張り出し
たときに、ごちゃ混ぜにすると、大将棋の駒か小将棋の駒
が判らなくなったのだろう。元々大体、大将棋の駒の方の
金銭的価値が、それを持っている事による優位性が有る分
大きかったので、

大将棋の駒は、小将棋の駒に紛れて消えてしまわないよう
にしたかった

に違いない。そのためしばらくすると、銀将、銅将、鉄将、
桂馬、香車、反車等が不成りのタイプの大将棋具の

所持が、貴族の間で流行る

ようになったのではないか。ルールの変更は、それに引っ
張られて起こったのかもしれない。つまり、普通唱導集大
将棋の定跡化した指し方からすると、一段目駒等は金成り
でも不成りでも良く、道具としては不成りの方が、9升目
36枚制標準平安小将棋(持ち駒型・成り敵陣移動の毎随
時型)も指すようになった、上流階級にとっては、管理上
その方が良かった。そのためにルールの方が、変化してし
まったのではないかと言う事である。ちなみに鎌倉時代中
には、いわゆる麒麟抄の”金は極崩しで書く”も、公にさ
れていなかったと見られる点にも、注意する必要がある。
小将棋具として、今で言う市場等には、崩しの余りキツク
無い将棋駒も、恐らくかなり出回っていたからであろう。
なお、出土駒には成立年に誤差があるので、今の所”はっ
きり矛盾する史料が無い”という程度しか判らない。
 なお、以上の考えからすると、中将棋が発生して9升目
36枚制標準平安小将棋(持ち駒型・成り敵陣移動の毎随
時型)道具の、貴族の所持率が再び減少すると、状況が変
わり、金成りが復活し得る事をも示している。更に、
普通唱導集大将棋の最末期型、普通唱導集大将棋南北朝型
が発生したのは、デザイナーの、漢字に対する博識さが原
因だけでなく、それもあったのかもしれない。
 無論、現時点で以上の事を、具体的に史料を挙げて実証
する事は、とても困難だ。

状況を説明するための、以上は暫定的な説

という事に、一応留めておきたいと、ここでは考える。
(2019/06/22)

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