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高麗国の宮廷に、雲南の大理国将棋は贈られたのか(長さん)

言うまでも無く、現在の朝鮮半島では、中国
シャンチーに酷似の、朝鮮チャンギが主流で
ある。しかしながら、今から1000年程度
前の北宋時代に、北宋商人を通じて、中国と
高麗王朝の間に、交易があった事は明らかだ
ろう。その間、日本へは雲南の将棋が、交易
品としてやってきたと、本ブログでは従来よ
り推定・主張している。理由はともかくとし
て、高麗に北宋商人等が、原始平安小将棋
(8升目、取捨て、酔象1枚型)と同じと
みられる雲南大理国、宮廷将棋を伝来させ無
かったのか。また、有ったとしたら、日本の
ように、それが朝鮮半島では、主流になら無
かった理由は何だったのかを、今回は論題に
する。
 答えをまず書く。

高麗の宮廷に、北宋商人が、雲南大理国の、
日本の小将棋の原型を伝えた事は、有った

と本ブログでは見る。しかしながら、
武者、貴族、僧侶、果ては庶民等、
贈答先の国の、贈答人とは別の広範な階層に、
宮廷用の玉金銀装飾将棋の、ルール同一品が、

日本のように広まる事は、朝鮮半島高麗国で
は起こらなかった。

理由は、日本の平安期と違い、高麗国では、

国境警備隊の主力が荷揚げ港に居なかった為

であると、考えられる。
 では、以下に説明を加える。高麗国の国境
警備隊の武者は、

北部の遼(契丹)との境目と、半島の東の沿
岸に、女真族の侵入に備えて、11~12世
紀には、主力配備されていた

と考えられる。他方、北宋からソウルへの、
交易品の伝来は、

黄海沿いだった

と考えられる。つまり、伝来の貴族・皇族用
の贅沢将棋の道具は、高麗では、博多の近く
に居た大宰府の武家と違い、

自分の居所を通って、都に運ばれなかった。

だから、武芸を磨く目的で、行われる将棋・
チャンギは、皇族・貴族の贅沢な御遊び用の
将棋と、

兼用になるという事が、高麗国では無かった。

武芸を磨くに相応しい、ゲーム性が向上して
から、民間ブームのレベルで大理国将棋より
も100年以上送れて伝来した、中国シャン
チーからの変性ゲームの、朝鮮チャンギが、
従って、高麗では、武者の武芸の上達のため
のゲームとなった。
 他方、大理国の絢爛豪華な玉金銀装飾将棋
は、高麗では、本来の目的の通り、皇族や、
上級貴族の遊びとして使用され、

王朝が衰退するか、消滅してしまうと、それ
と共に、消えてしまった。

 以上のような経緯で、結局、他の点で高麗
と日本とで差が、それほどは無かったにも係
わらず、日本では民間に、五角形駒に遊具の
形を変えて、玉金銀装飾将棋は生き残り、朝
鮮半島、韓国・北朝鮮では、朝鮮半島のチャ
ンギが、主流として残っているのではないか
と、私は考えている。
 以上の状況は、前に述べたが、北宋と李氏
大越の境、チャンパ王国と李氏大越の境に、
国境警備隊が配備され、大理国と李氏大越国
の間には、事実上、緊張が無かったために、
大理国の将棋が、(一例)周文裔が通過した
際に民間に伝わらなかった、ベトナムと、韓
国・北朝鮮は、ほぼ同じ状況だと私は考える。
 なお他の国は、概ねイスラムシャトランジ
が、その前に、その国の将棋・象棋文化を、
制圧していたと私は見る。
 特に朝鮮半島の現在のチャンギを見ると、
象は、八卦思想を強調しようとして、イスラ
ムシャトランジの象から、変更しているし、
士は恐らく、日本の小将棋に後影響を受けて、
漢・楚と同じルールに変わっている。また、
象と馬と、場合によっては車までもが、交換
できるルールになっていて、インドのある地
方や四人制チャトランガのあるバージョンで、
象、馬、車の配置が入れ替わる事を、連想さ
せている。つまり、

イスラムシャトランジに対する”こだわり”
は、中国の北宋とは異なり、高麗国内では、
それほどまでには、強くは無かった

と、考えられるという事であろう。
 だから、古インド系の系統の大理国将棋が
定着しないのは、イスラム科学・天文
学への信仰から、イスラム文化を吸収すると
いう傾向ばかりで、あるからではなくて、
高麗王朝内では、

皇族・貴族も含めて、高麗では古インド文化
でも良しとしたが、情報そのものが日本と違っ
て単に、別の場所に居た”底辺層”に、伝わ
らなかった、だけだからだ

と考えた方が、より尤もらしいのではないか
と私は思う。
 日本は間宮海峡で大陸と続いているが、寒
すぎて、ユーラシア大陸の他民族が侵攻して
来る事が、それほど頻繁には無く、間にアイ
ヌも居たから、国軍の駐屯場所として、北海
道等が重視される事は、古代末期には、それ
ほど無かった。そして、

もっぱら博多が、軍も交易も玄関だったのが、
皇族・貴族の玉金銀装飾の唐物贅沢品将棋
と、武芸上達用将棋の兼用という、特異な状況
を日本でだけで生んだ理由

だった。
 以上のように、一応考えられるという事で
あろう。(2019/08/23)

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