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伊東倫厚氏古インドチャトランガ馬八方桂説の根拠(長さん)

本ブログでは、古インドチャトランガの最下段は、
飛龍、桂馬、角行、玉、近王、角行、桂馬、飛龍
の増川宏一”将棋Ⅰ”説を、今の所取っている。
なお、このうち飛龍は、本ブログだけの解釈だが、
2升目までの走りかもしれない。
 ただし上で、馬は八方桂だというのが、学会全体
としては主流であるとみられる。欧米のチェス史
の研究家は、ほぼ八方桂説と見られる。日本でも、
将棋ジャーナルに、西暦1984年頃から投稿記事
を著作されていた、東洋言語に詳しい伊東倫厚氏は、

古代チャトランガの馬は、八方桂馬動きと将棋
ジャーナルに書いている。

 馬が八方桂だと、古代チャトランガと、原始平
安小将棋の共通駒は、玉、近王、桂馬の3種類か
ら、玉と近王としての金将の2種に後退するので、
日本の平安小将棋を、インドの古形型チャトランガ
の類とするのは、少し厳しくなる。そこで今回は、
すばり、どちらが正しいのかを、論題とする。
 回答を書く。
どちらにも取れるように、インドの文献には、別々
の所で、一方では桂馬と取れ、別の所の記載では、
八方桂と取れるように、矛盾した内容が書いてある
だけで、

従って確定無理なのが、現状である

と考えられる。
 では、説明を続ける。
 伊東倫厚氏は、将棋ジャーナルの1984年
10月号の将棋探源5で、”問題の
ユディヒシュティラ王子とヴィアーサ仙人問答には、
王が八方隣接升目歩み、歩兵が前方歩みで、相手
駒斜め前捕獲、象が四方向に走り、馬が八方桂馬、
船が飛龍で跳び超えるが踊らず、隣接升目に行かず
の動きであると、書いてある”と述べている。
 他方、ものと人間の文化史110チェス(20
03年)四人制チャトランガ(1)で増川宏一氏
は、個別にルールが、判りやすく書いてあると述べ
ていない。
 ただし伊東氏、増川氏両者共に”原文は意味不明
の部分も多い”と、主張している。ので、

それぞれ今の所、互いに意味の取れない部分は、
読み飛ばしたと解釈する以外に無い

と私は思う。なお、将棋ジャーナルで伊東氏は、
”この『ユディヒシュティラ王子と、ヴィアーサ
仙人の問答』は、サンスクリット語の辞書で、
13世紀以降の、ナーガリー文字で書かれている
とされる”シャブダ・カルパ・ドゥルマ”及び、
”ヴァーチャスパトヤ”に、項目名『ディティ・
アーディ・タットヴァ』の中の記載として、出て
いるものである。”との旨を述べている。
 辞書の中のユディヒシュティラ王子と、ヴィアー
サ仙人の問答と、増川宏一氏の言うA・ウェーバー
の、”インド起源のチェスに関する幾つかの覚書”
で記載されたユディヒシュティラ王子と、ヴィアー
サ仙人の問答とは、あるいは、同じではないのか
もしれない。
 所で、本ブログでは、2人制古代チャトランガ
と10世紀4人制チャトランガとで、初期配列が、
王、象、馬、船から、王、船、象、馬に変わって
いるとみている。この点も、伊東氏の解読とは、

合って居無い。”王・象・馬・船、2段目兵と、
ユディヒシュティラ王子と、ヴィアーサ仙人の
問答に書いてある”と、伊東倫厚氏は述べている。

なお確かに、端列の名称は、矛盾するが、船側と
表現していると私も解釈している。以下に、本ブ
ログ独自の、4人制チャトランガ配列図を示す。

四人制チャトランガ改善.gif

 上記の配列が、アル=ビールーニー図より良いの
は、序盤の駒組を考えなくても、元々各自の駒が、
別の王に当たり易く、サイコロの賭博性の
特長だけが出て、勝負が早く付くという点である。
 何れにしても、本ブログで強調している、端列
で段奥に達した歩兵の、ガーダー状態に関する記
載について、伊東倫厚氏の将棋ジャーナル、
将棋探源シリーズには、対応する記載が、今の所
見当たら無い。シャートパダの説明の後、ガーダー
の説明が飛んでいて、カーカカシューターの説明
へ、移っているという感じである。他方以下が
重要だが、伊東氏は、
将棋ジャーナルの1984年11月号の将棋探源
70ページ以降で、”ユディヒシュティラ王子と、
ヴィアーサ仙人の問答で、

船の行き所は、4箇所だと、記載されているのに
対して、
馬の行き所は、8箇所だと記載されていて、前者
より、後者の方が多い事が判る”

と、明確に述べている。しかし、重大な内容だが、
増川宏一氏の、ものと人間の文化史110、チェス
の四人制チャトランガに、その旨の記載は見当た
らない。
 今の所、この点についてもお互いに、意味不明と
見ている部分は、読み飛ばしていると考えるしか、
説明する道は無いだろう。
 以上の事から結論としては、ユディヒシュティ
ラ王子と、ヴィアーサ仙人の問答には、”
①ガーダーの記載から、象・馬・車(船)の中
に、後退できない駒が有る事を示している。
②車(船)に4升、行き所が有るのに対し、
馬に8升、行き所が有る事が記載されている。”
の、①、②が、共に書いて有るとしか、言いよう
も無いように、私には思える。
 馬が桂馬にも八方桂にも、どちらも取れる形で、
10世紀頃の、二人制チャトランガのルールが、
伝えられているのだろう。
 なお記述内容が、”ものと人間の文化史110
チェス、チャトランガ1”と合っているように、
私には今の所読めないが、”第5の王”という
単語自体は存在する事を、伊東倫厚氏も、将棋
ジャーナル、1984年11月号の将棋探源6
ないし、1985年1月号の将棋探源7に、記載
しているようである。(2019/08/30)

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