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アルマゲストの月運動論は改良不能だったのか(長さん)

以前述べたが、古代インド人は”思想嫌い”であり、
事実と合わない概念は排除する性格を持っていると
した。馬が桂馬が元々との、本ブログの将棋の論と
関連して述べたのである。アルマゲストが18世紀
まで、インドの言語にアラビア語から、翻訳されな
かったのは、インド人が暦法との関連で、
アルマゲストの月運動論を見て、出差を説明するた
めの、月軌道の導円の、中心の地球に対する、
朔望月周期の時計回り回転(運動方向と逆)が、
奇怪に思えたためと考えられた。今回は概略的に実
際に、角度の偏差計算をして、図でその奇怪性を証
明してみる。答えから示すと、以下の図の青線のよ
うに、黄経偏差曲線が定性的に計算できる。

アルマゲスト.gif

 一目だが、山がイビツであり、頂上が平らになっ
たときを、月軌道の長軸が、地球軌道と平行になっ
たときと、仕方なくしたようだとは判る。

それにしても唸ったサインカーブからは、ほど遠い。

2つ極値が出るのは、重ね合わせが近点月の1/2
よりも少し大きい周期で、導円中心と月を回帰させ
ているのだから当然と言える。これでは、

もっときれいなカーブが実際だと、判っていたとみ
られる古代インドの暦担当者が、納得しなのは当然

だと私は思う。
 実は、どうやってもこうなるのではなく、実際に
チェックしてみれば判るが、この場合は単に、
導円中心の周回の方向を、反時計回りにして、
かつ、近点月の1/6程度の周回角速度に直し、
出差項が、2×朔望月-近点月の周期の、フーリエ
成分だという事を反映させさえすれば、以下のよう
にわりと簡単に、直せるものである。

改善アルマゲスト.gif

なお、上の計算は、昔のbasicを引っ張り出し
てきてやってみた。プログラムは下記の通り。
1000 cls
1010 HEN=3.14159265/180
1015 for kodo=0 to 3600
1017 rado=HEN*kodo
1020 X=100*cos(rado)-10-2*cos(0.17*rado)
1040 Y=100*sin(rado)-2*sin(0.17*rado)
1050 gaX=X+320
1055 gaY=200-Y
1060 pset(gaX,gaY)
1070 gosa=atn(Y/X)-rado
1072 if gosa<-3.14159265+1 then gosa=gosa+3.14159265:goto 1072
1075 'print gosa
1080 gaX=0.2*kodo+10
1090 gaY=350-200*gosa
1100 pset(gaX,gaY),5
2000 next kodo
 ちなみに、擬似的に面積速度一定になるように、
本当はエカントの周りで、月を等角運動させないと
いけない。が傾向は変わらないので、今回は略した。
略しても傾向が変わらないことは正弦定理と、ラジ
アン単位で角度θを表したときに、θが小さい範囲
で、θ≒sin(θ)である事から導ける。つまり、
計算途中の軌道の変化は、本当は、2倍程度大きく
なるはずである。また上記例では、周天円を使わず、
等価なので離心円で計算している。
以上は、ともかくとして。
 上のケースも、月までの距離が、実際より結構大
きくフレる事には変わりないので、現在のレベルで
は納得出来ない事は確かである。しかし上記のパラ
メータ調整の結果から明らかなように、青で示した

黄経偏差曲線はきれいに唸ったサインカーブである。

 恐らくだが、プトレマイオスが、もし上記のよう
な月運動理論を立てていたとしたら、数学や天文学
書のインドでの翻訳は、もっと身を入れて行われた
のではないかと、よって私は疑うのである。
(2020/03/03)

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