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橘中之楽の仙人ゲームは囲碁と将棋のどちらか(長さん)

以前本ブログで紹介した、平凡社”中国古典文学大系
六朝・唐・宋小説選”前野直彬著(1968)によれ
ば、一例で石井妙子著”囲碁の力”洋泉社、西暦20
02年に記載の、囲碁の別称、”橘中之楽”の仙人ゲー
ムは、将棋・象棋の類(おそらく古チャトランガ系な
ので、本ブログの用語では”将棋”類)となっていた。
今回は、web上で判断する限り、囲碁と将棋とで、
どちらが正しいのかを論題にする。結論から書く。

よく判らないようである。

将棋と紹介するサイトも、囲碁の別称として”橘中の
楽”を紹介するサイトも有り、今の所判定不能である。
 恐らくだが、底本解説書に”(伝)牛僧儒の玄怪録
で、橘中の仙人の物語では、囲碁を2局打っていた”
とするものが、近世中国に存在するのであろう。その
ため、前野直彬氏の橘中之楽と対応する玄怪録の訳と
は矛盾するが、石井妙子氏は、囲碁の別称として、
”橘中之楽”を紹介しているのであろう。
 以下、もう少し詳しく論じる。
 ”橘中之楽”のゲームを将棋とするweb上のサイ
トの方が、囲碁とするサイトに比べて一般に、この説
話を丁寧に述べているという傾向がある。この事から、

将棋説者は平凡社”中国古典文学大系 六朝・唐・宋
小説選”前野直彬著を読んでそのように紹介している

という心象である。それに対し、少なくともweb上
の囲碁説は、元ネタが特定で、

単なるコピーの拡散との心象

を個人的にだが受けた。
 よって、何か元が有るようだが、良く判らず、かつ、
だいたい、特定の記載事実が根拠だと、今の所私には、
推定される。
 そこで、諸橋徹次の大漢和辞典(㈱大修館)第6巻
553ページ(通算6265ページ)を見ると、中国
の”書言故事、博奕類”でも既に、囲碁となっている。
更に、日本国語大辞典(小学館)第4巻の185ペー
ジには、日本の安土桃山時代~江戸時代(西暦161
4年)成立の、”慶長見聞録”で既に日本でも、囲碁
の事になっていたようである。両者の情報を繋げると、
宋代の胡継宗の巽と聞く”書言故事、博奕類”で、
橘中之楽を囲碁とし、慶長見聞録の頃から、”奕棊”
と書言故事に書いてあるから囲碁と、日本では中世末
に決め付けているようにも見える。が、はっきりこの
中国文献が元情報だとまでは、断定できないであろう。
 なお、藁科満治氏の”浮世絵に映える囲碁文化”
日本評論、西暦2012年では”橘中之楽”が、囲碁
の別称との記載は無い。藁科氏は、”爛柯””忘憂”
”坐隠””手談”の4つを、囲碁の別称として挙げて
いるだけである。”橘中之楽”に問題があるのを、
藁科満治氏は、多分知っているのであろう。
 以上の事から”橘中之楽”が囲碁の別称だという論
は、中国文献の”書言故事、博奕類”に、元々はある
と、みるべきなのかもしれず、又は何か、別の近世の、
玄怪録の中国での解説本が元のようでもある。よって
今ところ、玄怪録の出典も太平広記であって、原本で
はないわけだし、橘中之楽の中のゲームは、ゲーム種
を、物語の内容から特定することも、元々困難である。
なので、

囲碁が1/2で、将棋が1/2程度としか、今の所
考えようも無い

ように、私には取れるという結果に終わった。
(2020/03/22)

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