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15C末~16Cハリハラチャトランガのチェック(長さん)

以前に、ボックラーミンクの1995年の論文
にハリハラチャトランガという、いわばインド
の大将棋にあたる、14×14升目概ね64枚
制の将棋があるのを紹介した。元々は、
増川宏一氏、ものと人間の文化史134
遊戯・その歴史と研究の歩み(2006)によると、
ボックラーミンクの発掘した、チムール帝国
少し後頃の、インドのチャトランガ型ゲーム
であって、64枚制の平安大将棋のインド版
というべきものである。初期配列が一定して
おらず、10種類以上のうちから、配列を一
種類選んで指すという点に特徴が有るとされる。
 以下話を見えやすくするため、結論から書い
てしまおう。この

李氏朝鮮の七国将棋風の2人制ゲームは、騎駒
が互いに初期当りしないように選べば、ゲーム
の出来の良し悪しは、どれでもほぼ一緒。国王
が奔王動きなので、玉駒が捕まえにくく、引き
分けに終わりやすく、ゲームの出来は良くない。

では、説明を開始する。
 実の所、ボックラーミンクの2001ドイツ
語論文に、もっと詳しく書いてあるのだが。そ
こに書かれた駒の動かし方ルール等は、実は

ドイツ語が読めないので、本ブログの管理人に
は良く判って居ない。

論文名は、以下のようなもので、紹介サイトは
前に紹介した以下と同じである。
エイチティティピー:
//history.chess.free.fr/library.htmにあり、
論文の名前は、
Das 8. Kapitel des HariharacaturaUga:
ein spatmittelalterlicher Sanskrittext uber
eine Form des “Grosen Schachs”
Annotierte Ubersetzung und Interpretation /
である。
 しかし、駒の動かし方のルール説明図が、
上記の論文に、幸い書いてあるので、以下のルー
ルであると仮定し、指してみた。なお、配列が
一定せず、しばしば最下段が空列になっている
ので、仲人型の動きであるこのゲームの兵駒類
は、この2人制チャトランガでは不成とした。
国王:玉駒。奔王の動き。
弓:七国将棋の弓の動きに類似するが、4升先
までではなくて、6升先まで走る。(正式名称
不明。以下同様、本ブログの付けた仮の名。)
六騎:八方桂の動きに加えて、8方向の何れか
に6升目先にだけ走り、そこで止まる事もでき
るが、更に8方桂の動きを6升目先からする。
ただし、相手の駒を捕獲したときには、更にそ
の先へは跳べずに、そこに止まる。
飛車:飛車の動き。
雨龍:前方だけ5升目先まで走る。そこで止まっ
てもよいし、更に斜め後ろに1升目歩んでも良
い。ただし、相手の駒を捕獲したときには、そ
こで止まり、斜めに後退はできない。
一卒~4卒:前方に1卒は一升歩。2卒は2升、
3卒は3升、4卒は4升迄走るが、相手駒は取
れない。また、何れも後退でき相手駒は取れな
い。相手の駒を取るときには、チェスのポーン
同様、斜め前升目でだけ取り、そのときだけ、
斜め前に進む。
なお、原文の雰囲気からみて、弓駒は本当は、
3種類有りそうである。違いは私にはよく判ら
ない。
 初期配列は、上記論文の図12を使用してみ
た。

ハリハラチャトランガ初期.gif

恐らくだが、六騎が、早く消耗する配列の方が、
性能は上だとみられる。この初期配列だと、
以下のように、簡単に王手が掛かる。しかし、
飛車が利いているので、トン死はしにくく、
六騎は初期消耗(無駄相討ち)しないと、見ら
れる。

ハリハラチャトランガ3手.gif

ゲームを続行すると、大駒が有る程度残り、
陣が崩れると、

国王が玉将の動きだと、寄せの局面に入りそう

であった。

ハリハラチャトランガ指終.gif

しかしこのルールでは、国王が奔王動きなため、

ディフェンス過多で、大方は引き分けとの結果

になった。恐らくだが、中国の七国将棋等が、
インドに伝来する事によって、
ハリハラチャトランガは成立したのであろう。
しかし、ほぼ七国将棋のままの国王だったため、
玉駒が奔王動きでは強すぎて、

出来の悪いゲームで終わった

との結果だったようである。15世紀から16
世紀にかけてのゲームなため、インド亜大陸に
は、ユーラシア全体のゲームが、往来しきった
後だったと考えるのが、やはり自然なように、
私には思える。(2020/03/24)

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