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増川宏一将棋Ⅰのイスラム圏15×15象棋は何者(長さん)

増川宏一氏の、ものと人間の文化史23-1、
将棋Ⅰ、1977、法制大学出版局の、97
ページ、Ⅲ日本の将棋、3平安時代の将棋、
大将棋の出現に、イスラムシャトランジ系の
駒数多数将棋の紹介が唐突にある。そこには、
3種の初期配列の自陣図の絵があるとともに、
”最も古い順に、10×11、12×12、
13×13、14×14、15×15の盤の
2人制象棋がある”との旨比較的簡単な記載
がある。今回は、このうち15×15升目盤
のイスラムシャトランジ系駒数多数将棋が、
他の文献にも、紹介が余り見当たらず、いっ
たい何者なのかについてを論題とする。
回答から書く。

スペイン象棋のグランドアセドレフに、イン
ドの14升目制アトランジの、女王、皇太子、
追加グリフォンと、3枚ポーンを各々に加え
たようなゲームなのではないか

と推定される。
 では、論を開始する。論が見えやすいよう
に、議論は末備から遡ってみる。まず、将棋
Ⅰの97ページの本文中のゲーム種は、次の
ゲームが、それぞれその内容だとみられる。
10×11盤:チムールチェス類で段が1段
少ないもの。
12×12盤:スペインの
グランドアセドレフ。
13×13盤:トルコの
シャトランジ・アル・カビール。
14×14盤:インド14升目制アトランジ。
なお、本ブログの見解では、12×12盤の
スペインのグランドアセドレフが最も初出が
早く、その他は盤が小さいほうから大きい方
へ順次出現したように思われる。14升目盤
のインドのアトランジは、女王があるので、
出来たのはかなり後だ。

だから15升目盤のゲームはかなり新しい物

と推定できる。なお、前後するが、増川氏の
将棋Ⅰの本文中では、図に示した一番上のゲー
ムである、イスラム圏での10×10升目ゲー
ム、シャトランジ・アツ・タマームには、
言及が無いと考えられる。実際には、この
10升目ゲームが、この中では一番出現が、
早いのであろう。
 ところで梅林勲、岡野伸氏著作の、
”世界の将棋”2000、将棋天国社には、
15升目盤将棋の紹介は無い。ただし、
ものと人間の文化史23-1、将棋Ⅰで、
増川氏が、このゲームの駒種に、王、
グリフォン、一角獣、獅子、鰐、麒麟、城、
兵がある事を示唆している。
この事から、この未知の15升目制60枚制
ゲームが12升目制の、スペインのグランド
アセドレフに類似であると、推定できる。
 また、本文中に、”動きの同じ駒が2枚づ
つダブって現われ、ダブルチェスや四人制
インドチャトランガを連想させる”と、取れ
る旨の記載もある。後者から、15升目制の
ゲームは、グランドアセドレフに、インドの
14×14升目のアトランジの中央駒を、混
ぜたものであると考えると、ちょうどツジツ
マが合う事が判る。
 つまり、グランドアセドレフで、左から
王、グリフォンの所を、左から、
グリフォン、女王、王、皇太子、グリフォン
等とし、アトランジとは異なり、女王を西洋
チェスの女王動き、皇太子は王と同じにする
というゲームが、一例として思い浮かぶ。
 増川氏は将棋Ⅰに詳細記載していないので

正確には判らない

のだが。インドとスペインのイスラムシャト
ランジ型のゲームを、たとえばオスマン帝国
時代に混合した象棋が有ったとしても、特に
おかしくは無いと、思われるのである。
(2020/04/29)

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