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なぜエスパニョーラ・アヘドレース射手駒は非対称(長さん)

web上中将棋連盟のページと梅林勲・岡野伸
著”世界の将棋 改訂版”(2000)に載っ
ているが、スペインの18世紀初の10升目古
チェスに表題のエスパニョーラ・アヘドレース
というボードゲームが有るとの事である。以前
本ブログでは、イスラムシャトランジの流れを
汲む西洋チェス型のゲームの駒には、ポーン系
の駒を除けば前後非対称駒が無い点を指摘した。
しかるに、この”スペインのチェス”と訳せる
チェスゲームには射手という名称の駒が加わり、
前と横と斜め後ろの5方向に走り、日本の将棋駒
の類に見られるのと同様、前後非対称の動きを
するとの旨、前述の”世界の将棋”では紹介されて
いる。今回は、西洋チェス系としてはレアーだが、
このスペインの古チェスゲームに、非対称動きの
駒がある原因を論題にする。
回答から書く。
 ”拡張され・改善されたチェス”と訳せる、
エンラージド・アンド・インプループドチェス
というゲームが、17世紀末に先行してあり、

エスパニョーラ・アヘドレースの射手駒は、
エンラージド・アンド・インプループドチェス
の、”旗”駒と”守護”駒の類

とみられる。
 では説明を開始する。
”世界の将棋”によれば”18世紀初スペイン
のチェス”初期配列は以下の通りであり、8×
8盤ではなくて、10筋8段盤を使用する。白
側王右、黒側王左で、チェスとパターンは同じ
であるという。
2段目(白側):
ポーンポーンポーンポーンポーンポーンポーンポーンポーンポーン
ルーク口馬口ビショプ射手□クインキング射手口ビショプ馬口ルーク
駒の動かし方ルール等は、射手を除いて普通の
西洋チェスと同じとの事である。そして射手の
ルールは、”前進のときルーク、後退のとき
ビショップである”との旨が、世界の将棋では
紹介され、梅林氏らの見解では、”5方向走り
であろう”とされている。だが、

梅林氏の解釈はたぶん、違うのではないか

というのが、私の考えだ。
駒にアテるとき、取るときと、王手と王自体が
捕獲されるときにはルークで、普通に動かす、
つまり相手駒には移動先で当らず、逃げるだけ
のとき等にはビショップの動きという事なので
はないか。
 すなわち、冒頭で答えを書いたように、少し
前に作られた、”拡張され・改善されたチェス”
に、そのような駒があるからである。ちなみに、
17世紀末”拡張され・改善されたチェス”は、
10×10升目のチェスで、
18世紀初”スペインのチェス”に、2筋追加
と言う点で類似している。そしてその初期配列
は、以下の通りとされる。なお、白・黒共に、
王を中央左に配置するという。
3段目:
口口口□口口□口口口口口ポーンポーン口口口口口口□口口口口口
ポーンポーンポーンポーン口旗口口旗口ポーンポーンポーンポーン
ルーク口馬口ビショプ守護キングクイン口守護ビショプ口馬口ルーク
なお、3段目のポーンだけ、初手で1升目だけ
しか動けないが、チェスに有る駒は、基本的に
チェスの駒の、駒の動かし方ルールだと言う事
である。ただし、
旗は、相手の駒を取るときと王手を掛けるとき
ルークであり、駒を取らないときは基本的に、
ビショップの動きをすると、いうことである。
また守護は、相手の駒を取るときと王手を掛け
るときビショップであり、駒を取らないときは
基本的にルークの動きをするということである。
時代が近い事から、少なくとも私には、

西暦1700年前後のこの頃に、欧州では、
10升目チェスゲームの製作が、流行だったの
ではないか

と疑われる。そして、
エスパニョーラ・アヘドレース射手駒は基本的
に、同じような時代の

エンラージド・アンド・インプループドチェス
の、”旗”駒の類

なのではないのだろうか。
 つまり、非対称駒を作るという発想がそのこ
ろスペインにあったのではなくて、

エスパニョーラ・アヘドレースの射手駒では、
”相手の駒を取るときと、王手を掛けるときに、
ルーク動き”が、

”相手の駒に取るときに加えてアタリを掛ける
ときと、王手を掛けるときに、ルーク動き”に
多少、地域移動する事によって変移を起こした
だけ

なのではないのだろうかと、私は疑う。
 従ってスペインでも他の欧州諸国と同じで、
日本とは異なり、18世紀初の”スペインのチェ
ス”の”射手”駒の存在によっても、

前後非対称動きの駒を作る意識が、スペインに
も確実に有ったと言える情報とまではいかない

のではないか。以上のように、私は疑うのであ
る。(2020/05/14)

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