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タイ・カンボジアの”狐と鵞鳥”は”虎と牛”(長さん)

本ブログでは、西暦1260~1300年
程度の普通唱導集時代の大将棋の2段目に、
猛虎と対に猛牛が置かれていたはずだと、
繰り返し表明している。鬼門が源であり、
実際には袖に向かって虎、牛、猪、龍だが、
十二支円環の順序で書き直せば、牛、虎、
龍、猪であり、つまり12支円環の、近似
的な五等分を表現しているという解釈であ
る。猪点、丑寅点、龍点が正五角形の隣接
する3頂点との意味である。ここで五等分
の五は、将棋駒の五角形の五、また五行の
五と考えている。
 ただし、日本の将棋以外に、牛駒は見当
たらず、虎駒も、モンゴルシャタルの副官
駒が、イメージとしてそのような雰囲気が
あるだけである。特に、日本将棋の伝来元
が中国雲南である事にちなんで、日本で
猛牛を作成した時に、牛が、牛の国(猛:
ムアン)を表現しようとしてそうしたと言
うには、東南アジアや中国南部の象棋に、

虎駒と牛駒が無いとキツイ。

なお、闘獣棋には虎はあるが、牛は無かっ
たと記憶する。では、東南アジアのボード
ゲーム類に、虎と牛を駒としたものが無い
無いのかと言うと、

実は十六ムサシ系のゲームに、それはある

のを、最近知った。西暦2020年に、
大阪商業大学アミューズメント産業研究所
の研究員の、高橋浩徳氏が著作した、
”伝統ゲーム大事典”朝倉書店に、それは
次のように出ている。

タイと、カンボジアに1種類ずつあり、

ゲーム名は、タイのをスア・ギン・ニュア、
カンボジアのをクラーシコと記載している。
 駒は虎と牛で、ゲーム盤は前者が5×5、
後者が4×4で、西洋の狐と鵞鳥とゲーム
パターンが同じで、狐鵞鳥型とでも言うべ
き、十六ムサシ類のゲームであるようだ。
なお、日本の十六ムサシは、挟まれ取り型
なので、跳び越え間取りの狐と鵞鳥とは、
ルールが少し違うらしい。
 十六ムサシは将棋類ではないので、タイ
とカンボジアに、駒名が、虎と牛の十六
ムサシ系ゲームが有ったとしても、近隣の
中国雲南の猛(ムアン)の、その国の牛に
ちなんで日本で猛牛駒を作る動機付けは、
弱いと見る向きもあるかもしれない。
 ところが、前記伝統ゲーム大事典による
と、王と兵の二種類の駒のある、日本十六
ムサシ型の、互いに王を取り合うゲームが
カンボジアにあると言う事である。ゲーム
名は、”レク”と言うそうである。駒の
取得条件は、挟まれ取りに加えて、挟み
将棋の2枚で相手駒を挟んで取るパターン
の、どちらでも相手駒が取得(取捨て)に
なるというものらしい。十六ムサシ系のゲー
ムに、王、兵駒があるものがカンボジア
に存在するという事であろう。だから、

象棋系のゲームに、虎と牛を使うと似合う
という発想が、タイとカンボジアにあると
みなすのは自然

なのではないか。いろいろ理由はあるのだ
ろうが。牛を狙う虎を表現したテン国の造
形物は、東南アジアに情報として、ある程
度広まっていという事があるのであろう。
また鬼門という概念が、中国から日本だけ
ではなくて、十二支と共に東南アジアにも
広がったのが、虎と牛という組合せの理由
の一つであったろうと推定も出来る。
 ちなみに高橋浩徳氏の前記著作以前にも、
増川宏一氏が、ものと人間の文化史、29、
盤上遊戯、法政大学出版局(1978)で、
タイに、包囲ゲームの一種で、レン・チュア
という名称のゲームがあり、その駒は虎と
人ないし家畜であると記載していた(144
ページ)。レン・チュアは、高橋浩徳氏の
紹介しているスア・ギン・ニュアとは、路
塞ぎ型なので、少し違うようだ。タイと
カンボジアには、恐らくこうしたゲームが、
複数あるのではないかと私は思う。何れに
しても増川氏が、たまたまだったが、彼の
成書で”牛”を例示しなかったのが、残念
であった。
 従って今の所、全貌が判った訳でもなく、
情報はまだ淡いが。少なくとも後期大将棋
には有る猛牛は、中国南部から東南アジア
に掛けての牛を表現しているという証拠は、
雲南が牛の国(猛・ムアン)であるという
以外にも、ゲームの駒としても東南アジア
では使われる事があるからだと、更に明確
な理由付けは、出来そうなように、私には
思えて来た。(2020/09/05)

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