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今昔物語鈴鹿本の加速器質量分析による年代測定(長さん)

適宜今昔物語集の、成立年代の議論の書かれた
情報を成書なり、webで当ると共通に出てい
る公知の事実として、今昔物語集、鈴鹿本の
物品一部、本の綴じ糸を使った、炭素14同素
体法による、年代測定の議論に行き当たる。
 web上では、下記のurlに1993年頃
に、計測が行われたとの旨の報告ページがある。
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05835006/
”加速器C-14年代測定法による古文化財の正確
な年代決定に関する基礎研究”と、webペー
ジの冒頭に、表題が書かれており、名古屋大学
理学部が、加速器質量分析法の機器である、
タンデム加速器で、その測定を行ったとの旨で
ある。
 簡単に結果を述べると、

山姥が、西暦1120年成立に近いという結論に
なるかに見えるもの

であり、

摩訶大大将棋・摩訶大将棋の平安末期成立が、
否定できないとの旨の情報

になっている。今回は、それで良いのかどうか
を論題とする。結論から書く。

否である。

理由は、

鈴鹿本は、「初期の写本」であるから、原本成
立+100年、西暦1220年等に、成立して
いないとおかしい

からである。
 では、説明を開始する。
 近年では破壊型の分析方法ではあるが、
古文書の成立年代も、炭素14年代測定法で測
定されるようになったとの旨の情報は、web
上に複数ある。そしてその結果、

成果が上がっているとされている。

そして、今昔物語集の鈴鹿本のケースは、

写本であるはずの史料が、原本の成立年代と
ほぼ同じという主旨の結論になっている

という事は、冒頭のページを見ても、適当に
成書にあたっても、そのように書いてある。

だから、話のツジツマは合っていない

と本ブログでは考える。名古屋大学理学部は、
当時、今昔物語集の成立年代の通説と、
今昔物語集鈴鹿本のサンプル試料測定年代が
ぴたりと一致して、ほっとしては、いけない
のに気がつかなかった疑いが濃いと、私は懸
念する。
 つまり、あくまで鈴鹿本は、初期の写本と
いう話だったはずであるから、

西暦1120年よりも、数十年なり百年位新
しい年代測定結果が出なければおかしかった

はずだ。
 そもそもこの写本、今昔物語集の鈴鹿本は、
本への書き込みから、西暦1440年代まで、
誰かに読まれた形跡が無いと、今昔物語集の
研究成書に、書いてあるようだ。普通なら、
その直前、間にもう一回位、書写更新がある
位のペースであろう。
 以上は本ブログで、前に成立年代への疑念
を3点述べた際に、一番最後に指摘した事柄
である。なお、そもそも、それほど古い現物
が、更新書写一回も無く、今に伝わるのも不
思議なほど、保管条件が良かったのであり、
それだけでも、今昔物語集の鈴鹿本は、国宝
にするに値するだろう。
 この矛盾を説明する比較的簡単な方法は、

鈴鹿本は写書本ではなく原書(の一部)だ

と見る事だと私は思う。そして、読まれる
どころか、鈴鹿本が作られてから西暦14
40年頃まで、保管場所でいじられた形跡が
ない、すなわち放置された理由は、余り遠か
らずの前まで、単なる白紙の束と、糸巻きに、
とじ糸が巻きついた、未使用状態の糸の組合
せに、すぎなかったからだと考えると、
ツジツマが合いやすいと、私見する。つまり、
和紙や糸の購入経緯を知っていた今昔物語集
の作者は、

鈴鹿本の綴じ糸の成立年代に合わせて、その
年代に成立したかのような、書物を作成した

と考えれば、名古屋大学による、今昔物語集
鈴鹿本の、綴じ糸の年代測定結果は、一応説
明ができるという事である。
 ようするに、現在まで鈴鹿本は残るほど、
保存環境が良かった場所に在るのだから、
たとえば資材の時代にも、糸巻きに巻いてあっ
た鈴鹿本の綴じ糸はその状態で西暦1120
年から、

たとえば西暦1340年頃まで、保管場所に
資材として置いてあって、劣化は無いとして
も、何ら不思議は無いのではないか

と、私が疑っていると言う事である。
 恐らく、測定してみればわかると思うが、
物語りを書いた和紙もその程度の、だぶつい
て、鎌倉時代を通して白紙のままであった、
寺社の資材だったのではないのだろうか。
 元々、今昔物語集というのは、鈴鹿本が
保管されていた場所の関係者が、余り物の資
材で作成した、手慰みのつもりのものだった。
ので、書写履歴や前書き、奥付等一切無しで
書誌的事項の、無いものだったのではなかろ
うか。
 よって最初に読まれたのは、むしろ
西暦1440年代より、余り古くない時代に、
鈴鹿本を原書として今昔物語集自体が成立し、

何かが書かれているようだから、とにかく読
んで見た人間が発生したからなのではないか。

以上のように、やはり私は依然、通説の今昔
物語集成立年代、西暦1120年頃との説を、
かなり疑って見ているのである。(2020/09/18)
(参考文献)今昔物語集を学ぶ人のために、
小峯和明編、竹村信治、千本英史他著、
世界思想社、西暦2003年

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