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(コラム)半径3乗T2乗則は逆2乗K氏第一第二3法則よりどう導く(長)

東工大教授の中島秀人氏によると、万有引力の発見
にまつわる物理学史は、さいきんだいぶん進んで
いるようである。私などは、広瀬秀雄の、
”天文学史の試み”(誠文堂新光社・1981年、
定価2千3百円)で”ニュートンとライプニッツは、
逆2乗則から、ケプラーの第一、第二、第三法則を
全部解いたので、ニュートン力学の創始者になった。
が、グリニジ天文台台長のエドモンド=ハレーと、
フックの法則で有名なイギリスのロバートフックは、

逆2乗則、ケプラーの第一法則(惑星軌道は楕円で
焦点に太陽)と、ケプラーの第二法則(面積速度
一定)から、第3法則(軌道長半径の3乗は公転
周期の2乗)しか導けなかったので、創始者になれ
なかった”

でおしまいだったが、今はそう単純な経緯では、
なかったとされるらしい。
 では、エドモンド=ハレーとフックは、表題のよ
うにどうやって、

太陽からの引力の距離逆2乗依存則と、ヨハネス=
ケプラーの惑星の軌道に関する第一法則と第二法
則の3法則から、残りのケプラーの第3法則を導い
たのか

をここでは、高校数学で極限を教わったころの、学
生のレベルで考えてみる。つまり、”ε-δの思想”
は、彼には余り、判っていないとしよう。
解くべき課題は2つある。

1.円軌道のときには、半径の3乗と公転周期の2
乗は比例する。
2.軌道長半径が同じなら、離心率が0から1の範
囲で違っても、公転周期は等しい。

では、解いて見る。
 1については、1天文単位の地球の軌道と、
100天文単位のカイパーベルト天体の軌道の公転
周期を比較するのが、実は

最も判りやすい。

観測事実によれば、このカイパーベルト天体の公転
速度は、だいたい3km/秒で冥王星に近い値であ
り、地球の約30km/秒の1/10である。
 仮に、逆2乗則が成立するとすれば、1万分の1
の加速度が、カイパーベルト天体には、地球に比較
して働いているはずであり、

1000回加速度が働くと、100万倍天体の位置
を変え、地球に関して1回の場合と、太陽から見て
同じ角度だけ、カイパーベルト天体を移動させる。

なぜなら、2回目の加速のときには、元々1つ動い
た位置から始まるから、2つ動くのであり、3回目
の加速のときには、3つ動いた位置から1つ動かす
のであり、4回目の加速のときには、6つ動いた位
置から1つ動かすので、n回後には、級数の和の
計算で、

n(n+1)/2=1+2+3+4+・・+n

になっているためである。ところで、

n(n+1)/2=n^2/2+n/2

だが、nが大きくなると、n/2はn^2/2
に対して無視できるようになる。この状態で、
nがNである場合と、1000Nである場合を比較
すると、1000倍加速の今のカイパーベルト天体
の例では、

位置変化が1:100万になる

のである。ところで、地球軌道と軌道半径100倍
のカイパーベルト天体とは、軌道が100倍の大き
さ比で、当然相似である。そして、カイパーベルト
天体の1000加速は地球の1回加速と同じ形であ
り、カイパーベルト天体の1回加速は地球に対する
太陽引力の1回の1万分の一であったから、カイパー
一回加速の100万倍なら、地球1回の100倍で、

1:100の相似になっている。

だから、360°公転するには、100天文単位軌
道のカイパーベルト天体は、地球の1000倍の
1000年掛かる事になり、ケプラーの第3法則は、
ツジツマが合っているのである。いまは、軌道の半
径が100倍の場合の、円軌道を例にとったが、
その他の倍率でも、状況はいっしょなので、ケプラー
の第3法則は、円軌道なら、ニュートンの逆2乗則
から出る。
 2.の”軌道長半径が同じなら、離心率が0から
1の範囲で違っても、公転周期は等しい。”は、
積分を使わないのなら、次のようにして解く。
ケプラーの方程式は、ニュートン力学以前から知ら
れている。
 離心近点角E→平均近点角M(ケプラーの方程式)
であり、

M=E-e×sin(E)

であり、eは、

このケースに限り、楕円の離心率の事

であるので注意が必要だ。この式で今の問題を解く
ときに重要な事は、

Eが90°のときに、MとEとの変化比が1になる

という事である。鈴木敬信氏が自身の成書の、新
天文学通論等で、強調して主張している。
sin(X)の微分がcos(X)になり、
cos(π/2)が0なのを知っていれば、あたり
前だが。知らなくても、

sin関数は90°付近の変化が緩いので、
-e×sin(E)は有っても無くても同じだと
微積の無い時代にも、このくらいは判っただろう。

また、離心率eの楕円軌道の短半径をbとすると、
離心率eの楕円軌道の面積は、πabであるから、
離心率0の円がπa^2であるのと比較して面積は、

b/a倍となって、小さくなる。

そこで、楕円の場合の離心近点角が90°の点に
おける、面積速度について考えると、以下の図のよ
うになっている。

楕円面積速度.gif

注意すべき点は、

離心近点角の定義についてだ。

天体の位置から、

長半径の方向の大概はx軸に固定する線に対して、
y軸に平行になるように、垂線を立てて、補助円と
交わる点と、楕円の中心(真ん中)と結んで、x軸
との角度を測る

のである。90°の場合には、よって、微小変移
(たとえば89°から90°まで)に関して、2本の、

黄色で表したの線長(絶対値)は互いに等しくなる

のである。そして、離心近点角が90°のときだけ
に限り、

離心率eが何であれ、黄色い線の長さは一定
だというのが、ケプラーの方程式の教えるところ

である。
 そして更に図のように、今度は太陽位置、つまり
焦点の一方から見て、面積速度を計算するのに必要
な、真近点角νの変移を考えてみると、
三角形OBFと、緑と黄の線を含む小さな三角形は
相似になっている。なお、

中心角が90°点と、焦点を結んだ線の長さは、
楕円では、長半径の長さaと等しくなる。さらに
よって、黄色線長さ:緑線長さ=a:bであるから、

離心率がeの楕円の中心引力による面積速度は
b/a倍であって、半径がaの円軌道より小さくなっ
ている

のである。ところで、楕円の総面積は円の総面積の
b/a倍であったから、

それぞれが面積速度一定の、ケプラーの第2法則で
運動するとすれば、周期Tは、軌道長半径aが決ま
れば、離心率eによらずに、同じになる。

以上で2も証明できた。
 エドモンド=ハレーは、ほとんどこうだろうが、
恐らく、

ロバート=フックも、逆二乗、ケプラー第一、ケプ
ラー第2の3法則から、ケプラー第3の、軌道長半
径3乗と公転周期2乗の比例は、こうやって求めた

のであろう。以上のやり方は天体の空間位置計算に
興味のある天文学者向きだが。物理に強くなろうと
いう方へは、力積、運動量、仕事、運動エネルギー、
位置エネルギー、エネルギーの保存則といった重要
な概念が、概ねスルーされるので、あまりお勧めは
できない。(2020/04/15の2)

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middrinn

フックの生涯において知識や理論が蓄積・発展していったプロセスを踏まえて
論じなければならないでしょうし、難しいです(@_@;) ちなみに、中島秀人
『ロバート・フック ニュートンに消された男』(朝日選書,1996)のフックと
ニュートンの力学の論争を取り扱った章の結び、「もう一つ重要な問題として、
フックの引力の概念が、万有引力とは多少異なるという点が挙げられる。」も
論じられてました(@_@;) 広瀬秀雄『天文学史の試み』、面白そうですね(^^)
by middrinn (2020-04-15 13:05) 

df233285

middrinn様 コメントどうもありがとうございます。
1.ロバートフックは、望遠鏡の計測十字線の発明者。
2.ロバートフックは、地球の公転軌道が楕円であることの証明者。
3.軌道離心率が2%程度なため。チコ=ブラーエの観測レベルでは、
地球の軌道型は決定困難である。
4.太陽の視直径を、十字線つき望遠鏡と、ストップウオッチを使って
収差の影響が出ないように、視野中央だけで測定し、相対的な
地球太陽間距離をきめれば、地球公転軌道形の精密化は可能である。
以上1~4の情報が、私の所には、今の所ばらばらに有ります。
望遠鏡の時代になったら、チコ=ブラーエを越える人間が出るとい
うのは、当たり前だと言えばそれだけですが。地球の公転軌道を、
現実きっちりと測定してくれたロバートフックは、偉大だと私は思います。

by df233285 (2020-04-15 20:32) 

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