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水無瀬兼成の将棋纂図部類抄。”(或説云)仲人立聖目外”の謎(長さん)

水無瀬兼成の将棋纂図部類抄では、中将棋の成り図の後にある、中将棋
のルールの注釈部で、項目名”仲人”以下の、6カラムの解釈が、しば
しば将棋史家の間で、議論の対象になっている。これに関しては、今回
議論しない5カラムの文についての解釈として、大阪電気通信大学の、
高見友幸氏らの先行研究が、特に名高い。そこでここでは、高見友幸氏
等の考察では、まだ言及されていないと私が認識する、表題の、
”仲人立聖目外”について考えてみる。
 そこでいつものように、最初に結論を述べる事にしよう。

水無瀬兼成は大将棋について、13升目の普通唱導集大将棋型と15升
目の後期大将棋型の中間種について、なんらかの情報を持っていた、可
能性が、この事から言えるかもしれない

と、私は思う。
 次に私が、この項目名”仲人”の中段左カラムをどう、解釈している
のか、私見を述べる。

”或る説によると、大将棋・摩訶大大象戯・泰将棋の仲人も、そこで成
りが可能な自陣のラインの、直ぐ外の段に配置されていると言う事だ。”

というのが、私の意訳である。そもそも、この一文に言及のある、先行
研究例はたぶん、まだ無いと思うので、以上に対して賛成意見も反対意
見も、特に無いのではないかと、私は思っている。
 次に、この”或る説”が正しいのかどうか、という点に関する私見を
述べる。
 普通唱導集大将棋、後期大将棋については正しい。摩訶大大象戯につ
いては、室町時代の摩訶大大将棋の作者は、成りの条件について、元も
と述べていないと私は見るので、恐らく本来不定なので誤り。泰将棋に
ついては、作者の水無瀬兼成が、自分で決める問題だが、関心が薄く考
えなかったのだろうから、間違いだろうが、水無瀬兼成は、自分の著作
の中で、他人を責めてもしょうがないと思う。蛇足だが中将棋の仲人は、
聖目の直ぐ外段に、将棋纂図部類抄では配置されているのが、図から明
らかなので、正しいのは自明と見る。

 つまり、大将棋に関して、水無瀬兼成が、将棋纂図部類抄の中で言う
ようには、”奇説”になって居無い、謎が存在する

と、言う事である。
繰り返すと摩訶大大象戯については、将棋纂図部類抄の書き方は、正し
いとみる。すなわち、摩訶大大将棋・象戯等については、何らかの情報
に基づいて、松浦大六氏所有の象戯図式の著者は、江戸時代に”それら
は、自陣・相手陣の区別が無く、相手駒を取ると、駒が成るというルー
ルだと述べた”と、私は了解している。摩訶大大将棋、象戯の成りルー
ルは、江戸時代に、それまで何も無かったので、成りのパターンから想
像して、後世新たに作られたのでは、ないのだろうかと、確証は無いの
で曖昧性は残るが、とにかく存在自体を疑う。つまり、摩訶大大将棋類
の聖目(成りラインの印)は、元々無かった疑いが強いという事である。
 そこで以下、或る説についての信憑性の問題を大将棋に限る事にする。
 後期大将棋の仲人が、聖目の直ぐ外段なのは、水無瀬兼成の将棋纂図
部類抄では、恐らく誤記で抜けているので証拠が無いが、

新安沖沈没船出土の将棋盤(?)の聖目が、升目5個毎になるように、
打たれている等から、或る説が正しい

と、私は思う。後期大将棋の自陣が5段で、升目が15升目なのは、盤
のフォームにあわせたのだというのが、このブログでの見解である。そ
のために、その前の時代の普通唱導集大将棋は、道具の見た目が悪形と
見られて、室町時代前期に消滅させられたのだろう。
 次に、その普通唱導集大将棋の仲人が、自陣ラインの、直ぐ外升目配
置だった事も、以下の点から、ほぼ確実だと私は考えている。すなわち、

そうしないと、成り麒麟の獅子が、早く出来すぎてしまう

のである。この将棋は、成りは太子成りの酔象、奔王成りの鳳凰、獅子
成りの麒麟、と金に成れると見られる、歩兵の4種類だったとみられる。
 実際にゲームしてみると、後半鳳凰と麒麟が成るから、この将棋は
バランスが取れるのである。また、その成りの段も、相手陣歩兵の列で
ある事は、ゲームバランスから確実視される。だから、4段目で麒麟や
鳳凰が、獅子と奔王に成るのは、確実だと私は今の所見ている。
 そうしてみると、水無瀬兼成にも真相は不明なはずの、摩訶大大象戯
と、自分で決めれば何とでもなる、泰将棋は別として、

ほぼ、仲人立聖目外は確実なのに、”ひょっとしたら違うかも”を匂わ
せる、或説云が、”仲人”の節中段左の所に確実に掛からない様に、
水無瀬兼成は、なぜしっかりと文面を組み立てなかったのか

という謎が発生する。
 そこで、私はひょっとしたら、”プレ後期大将棋仲人立聖目内”なの
かもしれないと、一応は疑ってみようと、考えるようになった。
自陣の歩兵段が5段目ではなくて4段目。仲人が5段目で、自陣が、歩
兵段まてではなくて、仲人段までの5段目である、

15×15升目124枚制プレ後期大将棋の存在が、水無瀬兼成の時代
には情報として、まだ残っていた可能性もある

と、一応は疑うという事である。たとえば、その大将棋には、後期大将
棋には有る駒のうちで、特別な禁止手が、まだ未発明だったため獅子と、
たとえば小駒でどれでもよいのだが、一例として悪狼が無く、向こう側
の左辺の1/4の配列を、こちら側から見た配置を書くと、
麒麟は右辺が鳳凰に変わるから、その点に注意するとして、

向こう1段目が、玉将、金将、銀将、銅将、鉄将、石将、桂馬、香車
向こう2段目が、酔象、麒麟、盲虎、猛豹、嗔猪、猫叉、猛牛、反車
向こう3段目が、奔王、龍王、龍馬、角行、堅行、横行、飛龍、飛車
向こう4段目が、歩兵、歩兵、歩兵、歩兵、歩兵、歩兵、歩兵、歩兵
向こう5段目が、空升、空升、空升、仲人、空升、空升、空升、空升

という、びっしり駒配置の15×15升目124枚制大将棋という、
仮説普通唱導集大将棋と、後期大将棋のの中間形も考える事は、一応
は可能だと思う。そして、このプレ後期大将棋という

例外の存在を知っていたので、水無瀬兼成は、ひょっとすると、
”仲人立聖目外は、一説に過ぎない”と、断っているのかもしれない

と私は一応は疑う。
 ただし、この形のゲームの出来については、角行が、相手の反対側の
飛車に直射してしまうので、余り作りの良い大将棋ではないと、私は考
える。ゲーム出だしから、最初に左辺の飛龍前の歩兵を進めて、相手右
飛車を、いじめるように指すのだろう。が、面白いことに、この将棋も、

5手も余分に手数が掛かるが、”二つ進めた仲人と、五つ進めた嗔猪が
腹を合わせ、更に二つ進めた桂馬で支える”と、13升目の私の普通唱
導集大将棋モデルと同様、タスキがけの角筋の障害物にする事もできる。

 よって、今述べた事からも、将棋纂図部類抄の水無瀬の仲人節中段左
カラムは、要注意だと思うようになった。(2018/02/11)

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