SSブログ

チャトランガのルール、ユディヒシュティラとヴィアーサの38条より推定(長さん)

これまで、普通唱導集の内容により、その時代の将棋のルールを推定する
議論を、何回もしてきた。普通唱導集より将棋のルールを推定する事は、
二中歴により、その時代の将棋のルールを推定するのと違って、ルールを
説明するのが目的の、唱導で無いので、まるでパズルのようである。そこで、
今回は、そうしたパズルを解く練習として、インド・チャトランガのルール
を38条で記載したとされる、表題の、南インドのクンティ国の王子、
ユディヒシュティラとヴィアーサ(どういう人物か、両方私は知らない)の、
問答形式の、恐らく11世紀以降の、ルール・ブックの解読を取り上げて
みる。ここで38条のうち、かなりの部分が、”成り”とか”詰み”等、
いろいろな用語を説明する、カタカナ・ヒンディー語の説明文と
なっている。これらは、附則と言うべきであり、最も主体の、駒の初期
配列と、各駒の動かし方ルールの情報を、含んで居無い。そこで、カタカナ
・ヒンディー語の説明を述べた節は、今回は除いて、それの無い節だけ
最初に意味を考えてみる事にした。そこで、その条文の内容
を書くと、次のようになる。なお、出典は、「ものと人間の文化史110
「チェス」増川宏一著(2003年)」である。番号は、便宜上私がつけ
た。

1.兵はただ前に動くだけであるが、相手の駒を取るときは、何れか一方
の角度に進む。
2.舟(戦車)駒は、同時に斜め2つの升目を進む。
3.歩兵と舟(戦車)を取る時は、その際、歩兵や舟(戦車)も取られる
かもしれないし、そうでないかもしれない。王・象・馬を取るときは、
それらの駒は取られるのを避けられる。
4.王は最も重要な駒である。王が支配する、象とすべての他の駒は、
王を守るために、犠牲にしなければならない。
12.もし王が、他の王達を、彼ら自身の升目で詰んで殺したならば、彼は
賭金が4倍になる。
22.象は対立する象の場所に、行くことができない。
なお、「チェス」増川宏一著には、記載が主な物と断っており、
23~38条までの紹介は無い。
また、14条に「シャートパタ」と称する、兵の成りの規則が記載され、
「兵が玉の居た升目と、四隅の升目に達したとき以外は、その升目の相手の
駒に成る」との意味の事が書かれている。

そこで、以上から、王、象、馬、車(舟・戦車)、歩兵の、まず成る前の、
駒の動かし方のルールを推定してみる。

A.まず、王はとりあえず8方向に隣接升目1升づつ動きと仮定すると、
B.兵は、第1条から初手に2手動けない、チェスのポーンである

事は明らかである。また、

C.車は第2条から1升目でも止まれる、後期大将棋の飛龍で跳ぶ場合

のようである。また、第22条から、このゲームは4人制を説明している
ので、

D.象は角行等、縦横に行けない駒の動き

である事が判る。なお全く記載が無いのだが、

E.馬は、八方桂馬かそれに類似の動きと、最初は仮定

してみる。問題は、歩兵は2段目、王が8×8升目盤の最下段、中央の左
に来るとして、

残りの3枚の駒が、どう並ぶのか

である。これが難しい。第3条を旨く解釈して、割り出さなければならな
いと、私は思う。そこで、第3条の解釈だが、チェスや将棋・象棋のルール
記載としては、いっけん全く奇怪な内容である。駒に繋ぎがあるかどうかは、
駒の種類ではなくて序盤の、手数を踏んだ、駒の再配置作業によるというのが、
チェス・象棋・将棋類のゲームでは普通であるからである。なお、「その際、
歩兵や舟(戦車)も取られるかもしれないし」は、私見であるが「その際、
歩兵や舟(戦車)を取った、自分の駒も取られるかもしれないし」の誤訳の
疑いもあると、私は都合よく解釈する事にした。”同一種類の駒で取った場合、
駒の種類によって全く取り返せない”というルールは、明らかに不自然だと
私は思う。

では、第3条は、全体として何を言っているのか。

私見であるが、

初期位置で、車と、全部の歩兵には繋ぎ駒が有るが、王、象、馬には、
繋ぎ駒が無いような、初期配列になっている

事を言っているのかもしれないと思う。そこで、そうなるように、象、馬
車を配置すると、

4人制ならば端から、馬、象、車、王と並べる

しか、実は解はない。更に今の配列の話とは話は別だが、第14条の記載から、

E’.馬は、八方桂ではなくて、普通の桂馬であって、そこで成った兵は、
行きどころが無いので、動けない

と、馬のルールは、増川宏一氏の将棋Ⅰに載っていたように、八方桂ではな
くて、桂馬にするしか、今の所、無矛盾にはならないように思う。そこで
再び初期配列に話を戻すと、何れにしても

北朝鮮のチャンギ以外では、聞いたことも無いような、妙な初期配列である。

すると、第3条の解釈が、やはりおかしいか。良くわからなくなってきたの
で、この続きは、次回以降にしようと思う。(2017/09/09)

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー