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島本町教育委員会編「冊子象戯図」で将棋部類抄を、ざっと全体として見渡す(長さん)

幾つかの既存のブログ等で、水無瀬兼成の将棋部類抄は既に紹介
されており、精細な議論も行われている。以下は個々の議論には
触れず、この古文書を一気読みしたとして、マクロに気がつく事
について、骨の部分について触れてみる。結論をまず書くと、

著者は駒の動かし方のルールを、どの将棋種についてもきちんと
記載はしているが、大大将棋には力点が無く、泰将棋は「人から
借りた図である」と記載されているように別格である。

つまり将棋の辞書物であるので、網羅的には書いてあるが、
著者自身は、日本将棋と中将棋、大将棋、摩訶大大将棋に、関心
が有りそうである。根拠は箇条書きで挙げると、
①序文の最初と末尾の数行は、摩訶大大将棋の実質、紹介や編集
経緯についてのみ記している。また、中間部分は将棋一般につい
て述べているが、出てくる駒種は、日本将棋の桂馬と香車、およ
び、中将棋の獣駒を示唆しているのみである。
②大大将棋に力点が無いのは、初期配列の駒と、成り駒の図が、
他の将棋と違い、左右逆転している事に象徴される。このような
表記方法も、無いとは言えないのだろうが、何か別の所から取っ
てきて、入れ込んだ、コピペ物のような印象を受ける。
③写本の際の欠落なのかもしれないが、大将棋と大大将棋、およ
び、摩訶大大将棋の初期配列の方に、いわゆる「聖目」が入って
いない。あるいは、成りの規則が、大将棋や大大将棋では、他と
は違う事を示唆しているのかもしれないが。②の事とあわせて
考えてみると、大大将棋の影が、妙に薄く見える。
④摩訶大大将棋の初期配列および、成り、および、駒を並べると
きの配列の覚え方の後に、摩訶大大将棋口伝があり、摩訶大大将
棋の方が、少なくとも大大将棋よりは、将棋部類抄では、情報量
が多くなっている。
以上の事から”小将棋、中将棋、大将棋、摩訶大大将棋の4種が、
少なくとも水無瀬兼成には、日本の将棋の主要な将棋種”と、彼
自身の心の中では思われているような、書き方に、私には見えて
ならない。以上の事からあるいは、いわゆる後期大将棋と
摩訶大大将棋については、曼殊院本以外にも、水無瀬兼成には、
「比較的継続的に、発生してから少なくとも記録は、受け継がれ
たゲームである」という根拠が、示そうと思えば別途示せる、
彼にはメジャーに見えるゲーム種、という事なのかもしれない。
(2017/02/05)