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将棋の駒の飛の字の草書。いつも”十九”の縦続け字なのは何故(長さん)

出土駒を見始めた2年位前には、岩手県平泉町の志羅山遺跡の
両面飛龍駒の草書を、簡単にそう読んだ、木簡の字の解読の専
門家に関心したものだった。しかし、出土駒を見慣れてくると、
草書体に慣れていなくても、出土駒の字に見慣れていれば、こ
の駒の字は、簡単に読めるのが当たり前だと、思うようになっ
た。元々、飛龍の飛の字も、龍の字も、飛車と龍王・龍馬に有
るという事は、そうなのだが。実は、表題に書いたように、

草書の飛という字には、いろいろな字体があるにも係わらず、
将棋の駒では、ほぼ似たような形でいつも、書かれている

という事実があるのである。ここでは、”縦に十九と続けた形”
と、仮に将棋駒書体”飛”を、表現しておく。だから、書道で
草書を知っている本物の専門家には、余り見かけない、将棋駒
の飛の字の解読は、かえって困難だったかもしれないのである。
 今回は、場所や時代や、将棋駒に草書体で飛が使われる頻度
に関係なく、飛の字の将棋の駒の草書が、いつも”十九”の、
縦続け字なのは、何故なのかを論題とする。結論から書いて、
説明を後でする。

”縦続けの十九の飛”が、古代~中世の日本人には、兵器とし
て、強そうに見えたから

だと考えられる。ただし、今の日本人の我々に、現実にその感
覚が判らないため、

注意した方が良い、将棋駒の字体

だとも考える。特に、平泉町志羅山遺跡の

両面飛龍駒は、その時代の駒でも楷書が普通と考えられるため、
他の十九飛の字駒との関連性が薄いと見られるだけに、要注意

と私は見る。
 では、以下に説明を加える。
 所詮日本は、国土が狭いため、将棋駒の字体に関する情報は、
数十年という時間のオーダーで、何れ全国に行き渡ると見るの
が自然だと考えられる。だから、

1.平安時代末期に、岩手県で飛龍駒の飛が縦十九の続け字型。
2.15世紀末頃に、静岡県で飛鹿駒の飛が縦十九の続け字型。
3.16世紀半ばに、福井県で飛車駒の飛が縦十九の続け字型。

なのだが、お互いに情報が伝播できない時間ズレの量では無い。
なお、静岡県の例とは、焼津市の小川城跡の中将棋駒、福井県
の例というのは、一乗谷朝倉氏遺跡のオモテ面が草書の飛車駒
の事である。
 特に、2の静岡県の例は、公家の能筆家が、飛鹿や飛鷲の書
体を、縦十九の続け字の飛で書いているので、3の朝倉館の書
き駒師が、その情報の伝播によって、飛車の字を、普通は楷書
なのに、ほんの一部だが、草書で書いたときに、同じ字体にマ
ネしそうである。そもそも、全国的に歩兵の字を書くとき、歩
の最後の画と、兵の最初の画を続けてしまうという特徴が、地
域に無関係に存在する。この書き方は、興福寺出土駒から、一
乗谷朝倉氏遺跡駒まで、連続的に存在する。この事から見ても、
日本程度の狭い国土では、字体が、体裁が良いと見られるよう
になると、全国的に同じ字体になるのは、当たり前である事を
示しているように思える。
 ただし、問題の縦に続ける十九の飛が、平泉町の志羅山遺跡
の駒が起源とは、どうみても考えられない。京都の雰囲気を真
似て、気まぐれに草書の飛龍駒を、平泉では少数作成した秘蔵
駒のようにしか、見えないからである。つまり、特定の将棋種、
たとえば平安大将棋の駒は、全部両面草書で書いたという説は、
絶対無いとは言えないものの、古代末期の小将棋の遺物に、そ
の類例が見当たらないため、今の所考えにくいと言う事である。
 残りの2つの史料については、焼津駒の字書き師が、戦国時
代の京都の公家の書体を真似たのが、起源だろう。たまたま、
縦に続く十九の飛は、将棋駒に相応しい書体に、戦国時代には
見えたのだろうと、想像される。
 だから、種類のたくさんある飛の草書から、平泉町の飛龍駒
の書体が選ばれるとすれば、

我々草書で字を書く習慣がほとんど、無くなってしまった現代
人には、全くピンと来ないのだが、縦に続く十九の書体の飛は、
他の飛の書体に比べて、兵器としてよほど強そうに、古代末期
から中世までの日本人全てには見えるらしい

と仮定する事によってしか、1と2~3との間の、良く似た書
体の性質は、説明できないような気がする。実は、志羅山遺跡
出土の飛龍は、12世紀ではなくて、16世紀だったと極端に
遅く変えたら、その頃には縦に続く十九の書体の飛を、いつも
使っていたと考えれば、矛盾は消えるのかもしれないが。
 従って今の所は、飛の書体が、産地や年代に余りよらずに、
縦に続く十九の書体の飛であるのは、戦争駒のイメージに相応
しい書体であるだろうからであり、

そうでないとしたら、何らかの重大な情報を含んでいる

との、警戒心を持ちながら認識しておく必要があると、今の所
は私は、考えている。そんな状況なのである。(2018/12/03)

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