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日本の将棋具はなぜ彩色されていないのか(長さん)

中国シャンチーの駒が典型的だが、同じ字駒
でありながら、日本の将棋駒とは異なり、色
で敵味方を区別している。色料が入手しやす
かったとの説明がなされているが、火山国の
日本でも、色料の原料となる鉱物資源には、
少なくとも古代末期程度ならば事欠かなかっ
たはずである。では、にもかかわらず、何故、
日本の将棋駒が墨書であるケースが、特に発
生から中世に関して圧倒的なのか。今回は、
以上の点を論題とする。回答から書く。

将棋が一生ものの稽古事だという観念が行渡っ
ていたため、堅牢性の乏しい遊戯具が、日本
では好まれずに淘汰された

と考えられる。
では説明を開始する。
 事実として、色材を使った将棋駒の例とし
て、中世のものでは、神奈川県鎌倉市の
鶴岡八幡宮境内出土駒の、成奔王鳳凰駒の、
行き先を示す朱打点使用の例が、ほぼ知られ
るだけなように思われる。
 近世に関しては、武家用の将棋駒の成りが
朱筆で書かれた例はあると思うが、庶民には
禁制だったと聞いている。
 また当時の朱色顔料は水銀化合物なので、
大量に扱えば毒であり、昔の人も経験的に
それを知っていたはずである。

人生の花の咲いた時期に、賭博としてぱっと
使う遊戯具としては華々しかったが、地道に
長い間愛用するには近世でも彩色駒は不向き

だっただろう。
 賭博用具では有ったが、一生ものの稽古事
という建前が武家中心時代の長かったわが国
では、武芸と関連して優勢に存在していた。
そのため将棋具が特定の個人に関して、永年
使用される傾向が、外国の同系統の遊戯に比
べて著しかったのではないかと私は推定する。
 一時期やめても、道具がその間に劣化せず、
趣味を再開したら、又使用できる必要が、
日本人の場合には有ったのであろう。
 ところが、化学合成による色材が無く、天
然の色材のみで着色した時代の遊戯具は、彩
色がされている場合には、作りたての頃には
華やかでも、耐性堅牢性が乏しく、耐光劣化
も著しかったはずである。中国人等外国人の
ように、博打で儲けたいときに、たまたま
シャンチー駒が有れば良いという事情なら、
色で敵味方を区別する駒は、手ごろで使いや
すかったのだろうが。日本人のように長い人
生に於いて一時期止めても、歳を取ってから
又、将棋を指す事が多いといった文化の場合
には、間が長い時間とんでいても、その間に
遊戯具の色が無くなってしまわない将棋駒が
必要であり、その方が、水墨画風で地味でも、
選択的に使用されたのであろう。
 そのため、実際には例えば青色で字を書い
た五角形駒といったものが、一時期有ったと
しても、長い間に淘汰されて廃れてしまい、
墨一色で、成りと元駒で、字体を変えた将棋
駒が残ったのではあるまいか。
 以上のように、今の所私は推定しているの
である。(2020/09/12)

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