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江戸期”重宝記”集成読み”だいしょうぎ”(長さん)

以前に何回かに分けて、本ブログで
大将棋を”だいしょうぎ”と読んでいる
件について議論した。基本的には、
”おおしょうぎ”も”だいしょうぎ”も
正しく、国語辞書の拮抗の現実を反映す
べきものと言うのが、本ブログの主張で
あった。他方本ブログの表題”だい将棋
の謎”は、白熱した高段者の日本将棋の
対局を昭和の時代に、”おおしょうぎ”
と表現した例が有る為、その区別の為と
釈明した。しかるに最近、江戸期の各種
”重宝記”を集積させて編集したとされ
る、”江戸時代生活文化事典”勉誠出版
(2018)に、臨川書店西暦2004~
2009発行の”重宝記・資料集成”の
”別巻索引”に準拠するとされる大将棋
の読みの紹介が出ていて、

江戸時代にはゲーム名の発音読みが、か
なり散漫とした状態だった事を伺わせる
文献が本ブログの管理人にも発見された

ので、以下紹介する。前記の”江戸時代
生活文化事典”は、現代事典の類であり、
出典文体を、江戸期の重宝記のフォーム
にあわせたものとみられるものである。
解説文も文語調だが、カナ使いがほぼ現
代版の変わった辞書だ。
 項目名の読み方に関して、”江戸時代
生活文化事典”と”重宝記資料集成別巻
索引”とは、同じ編者、長友千代治氏に
よるものであり、情報に独立性は残念な
がら無い。
 また項目名で、上巻の718ページに
”将棋”に対応する”将棊の事”があり、
主要部は以下のように記載されている。
(以下、江戸時代生活文化事典”将棊の
事”の引用)
<異名>[書札調法記・六]に、象棋の
異名に、棋番、楸秤(しゅうひん)、
楸局がある。(ただし”秤”は木偏になっ
ている。←本ブログ注記。)
<始り>・・周の武帝が作り始め・・・
将棊には数種がある。○大将棊(おおしょ
うぎ)(=竪横各二十五目馬数354枚)。
○摩訶大大将棊(まかだいだいしょうぎ)
(=竪横各十九目、馬数192枚)・・・
○大将棊(だいしょうぎ)(=竪横各
十五目、馬数130枚)・・・このよう
に色々あるが中将棊、
小将棋(しょうしょうぎ・こしょうぎ)
は世に玩(あそ)ぶが、その外は指し様
が分からず、目数馬数を知るだけとある。
・・・
<将棊の詩>「互に玉将を指し初むる辰
(とき)、先ず歩兵(ふひょう)を突い
て還(また)仲人(ちゅうじん)、盤上
騎(のり)掛荷無しと雖も、角行-行馬
を替へて金銀を使ふ」とある。・・・・
(以上、要部の引用)
 上記から、

泰将棋を”おおしょうぎ”、後期大将棋
を”だいしょうぎ”と呼んで、漢字は、
大将棊としたまま、区別

している事は明らかである。そして内容
から、このように思い思いに、知識人が
ゲームを呼んでいたと思われる形跡があ
る。根拠は江戸時代のメジャーなゲーム
である日本将棋が、

”しょうしょうぎ”とも”こしょうぎ”
とも言われて、統一されていないとされ
る事から、そう推定できる

と、少なくとも私には思われる。日本将
棋ですら、江戸時代には呼称の統一が棚
上げだったのである。大将棋も、そう読
めると考えられる、あらゆる読みが並存
したと見なすのが、自然なのではないか。
 以上の事から、少なくとも

中世から近世にかけては、日本の将棋は、
表現の漢字が、ほぼ一定なら、”呼称”
に拘りがほとんど無かった疑いすらある

とも、私には感じられた。いわゆる御国
によって、どう呼ぶのか、バラバラだっ
たのかもしれないのではないだろうか。
なお、上の文書は、関西風で有る事が、
中将棋と日本将棋の流行を、同等に見て
いる事から推定できる。都内から今の所、
近世の中将棋駒の出土例が、酔象しか無
い事、将棋の家が江戸後期には日本将棋
しか、普及に力を入れていなかったと見
られる事から、重宝記の初期版が関西で
発行され出した事と、この事は何らかの
関係があるのかもしれないと、推定でき
るようだ。
 また<将棊の詩>の中に中将棋に有っ
て、日本将棋には無い”仲人”が出てく
るのも、このケースに関してはその為で
あろう。なお<異名>と<将棊の詩>に
ついて、何れかの重宝記に記載されてい
るのだろうが、浅学の本ブログの管理人
には、何れも初耳の内容だった。
 何れにしても、この時代には。
 以上の事から、物書きは将棋ゲームの
呼称に関して、”漢字でどう書くのか”
に注意するだけ。ゲームを実際にする
庶民は、土地の方言で、共通認識として
一定のゲームを表現して、それで不便が
無いと、済ましてしまっていたというの
が、江戸時代の将棋類の、呼称に関する
実態であった。以上の疑いが、依然とし
て存在する事だけは、確かなように私に
は感じられた。(2020/08/19)

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