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鳥獣戯画将棋の再考:7升将棋では?(長さん)

以前、表題の絵の将棋は6升目の言わば
平安小小将棋であるとして、本ブログは、
将棋内容の具体的な考察をした。しかし、
下の絵の、小柄の女性の着手は7×7
升目盤の4四の天王山位置へ、4五から、
一例歩兵を、上げているように見える。

鳥獣戯画将棋.gif

 よって、6升目の将棋と見るのは無理
ではないかと、再度この絵の、少し写り
の良い図を見て思うようになった。

なお、7升目将棋が元々通説

である。
 そこで、以下7升目として、どのよう
な将棋になると考えられるのかを再考し
てみた。
 古作登氏提案の、「酔象入り38枚制
酔象平安将棋」の、両袖の香車筋を除い
た、7升目取り捨て将棋で、しかも、
桂馬頭の歩兵も無い、次の初期配列の
将棋から、出発しているように見える。

鳥獣戯画7升初期.gif

 さて、この将棋が取り捨てなのは、
最初の鳥獣戯画将棋の将棋盤の拡大図で、
小柄な女性の着手が打ち駒では無い事、
太った相手の男性僧侶が、口にくわえた
指に、駒を持ってい無い事から、そのよ
うに推定されると考える。太った相手の
男性僧侶の右手の

指は、単純に口に咥えているように見え、
駒をかんでかつ、挟んでいる可能性は
皆無ではないが、そう見るのは不自然

だと考える。なお、太った僧侶男性が、
指を咥えて、唾を指に着けているように
見えるのは、次の自分の着手で駒を動か
すとき、

自駒と布製とみられる盤の間で、摩擦力
が元々大きく、駒と自分の指の間で滑っ
て、駒が動かないように、し無い為唾液
で、滑りを止めている

のだと、私は考える。
 さて、以上からこの7×7升目の将棋
は取り捨てルールだとして、具体的に、
将棋種を特定するヒントは、

写真の手前の2列で、端筋の頂点部に駒
が有るのに、歩兵合いになってい無い事
と、それらの頂点部駒の桂馬跳びの位置
の、2筋3段目に、歩兵とみられる駒が
有る

という点である。頂点部に駒が残り易い、
平安小将棋系では、余り見慣れない、陣
形駒分布だと思われる。
 この事から、初期配列の3段目は歩兵
で、端筋最下段が桂馬なのではないかと
予想できる。
 以上から、ほぼ直ちに全体として、
香車列を欠いた、日本将棋の初期配列か
ら出発しているのではないかと、推定出
来るように思う。
 そして、端列に駒合いの歩兵が無いの
は、元々

桂馬の頭に、繋ぎの無い歩兵を置かない
配列だから

と、考えられるのである。
 そこで、次に小柄の女性の背後で、
年配の僧侶とみられる男性が、次以降の
着手での複数駒の、連続取り合いを予想
するような手のしぐさをしている点から、
この将棋には、角行ルールの大駒の酔象
が在り、先手から見て、4六の初期位置
から▲5六金~▲4六酔象→▲5七酔象~
▲7五酔象~▲6四歩△同歩▲同酔象~
▲6五桂馬~▲5三桂馬成~▲5四歩~
▲5五酔象・・等で

4四位置に、酔象の利きが出来易いと
推定

されるように思われる。
 よって故木村義徳氏や近くは古作登氏
が提案した、玉将前升目に、酔象の有る
酔象入り平安小将棋の変形将棋の疑いが
濃いと、7升目将棋で間違いなければ、
私は思うのである。
 なお、普通の8×8升目と推定する原
始平安小将棋が12世紀末に指されず、
この将棋が、下級僧侶の間等で指されて
いるように見える経緯としては、

酔象が右銀将位置に有る将棋に、京都
からクレームが付いた事や、寺で正調
の「将棋」が禁止された事。8升目将棋
の定跡が12世紀頃には飽きられた事

等が、考えられると思う。逆に言えば、
この時代から、13世紀の始めにかけ
ては、将棋の駒種の個々の動かし方
ルールを知っていれば、ローカルルール
の将棋は皆指せたので。この7×7升目
の変種が、たまたま流行っている地域で、
鳥獣戯画が描かれたので、このような
将棋種の記録が、たまたま残ったのでは
無いかという経緯として説明できると私
は考える。
 この将棋の出来は、酔象の一枚入っ
た、8×8升目の原始大理国平安小将棋
と、ほぼ同等だったので。布盤の布の、
たまたまの大きさによって、盛んに指さ
れる地域が有っても、おかしくは無いと、
いう事なのかもしれないと、私は考え直
したのである。(2023/08/26)

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