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くにの漢字の国。平家物語写本に有り(長さん)

以前述べたように、本ブログでは今の所、
二巻物色葉字類抄(4冊物。前田本八木書店
2000年)の奥付”異字”に、口囲みの王
とともに、リストに無い事。口囲み王だけは、
観智院本の類聚名義抄に有る事などからの類
推で、”くに”の教育漢字”国”は鎌倉時代
日本での成立だろうと見ていた。最近この点
について笹原宏之氏著書”日本の漢字”、
岩波新書、2006に、鎌倉時代中期成立の、
平家物語の写本に、口囲み玉の国の字が出て
いるとの旨、記載されているのを発見した。
 第2章圓から円へ、の、略字の成り立ち
49ページと、”(中国が)日本式略字を取
り入れる”の212ページ付近に、”国”の
字成立に関する、情報が書かれているようで
ある。
 笹原氏によると、『
口囲み王の”くに”は中国で作られ、漢代
”隷書”に記載されている』との事である。
『王が国の中心であるとされたためであろう』
としている。
 他方近代でも、太平洋戦争終結以前に、”
国”の字が日本では余り使われていないと本
ブログの管理人は認識している。が笹原氏に
よると、鎌倉時代中期成立の、『平家物語』
のその写本と、江戸時代の『奥の細道』の
実筆本に、現代漢字の”国”の使用例が、見
い出せるという事だ。つまり現行の字の国は、
近代に入って、一旦廃れたという事になるよ
うだ。
 笹原氏は、”遅くとも平安時代以降は国の
字が使用されている”との旨を”日本の漢字”
に書いている。が、11世紀より前に、”国”
の字が日本に存在すると、将棋の遅い伝来派
にとって、不利になるという点で、将棋史へ
の影響が特に大きい。ので、それならば

初出文献を忘れず書いてほしかったと、私は
この著書の、この点に関しては残念

に思う。専門家向けの文献には、笹原氏は書
いているのかもしれないのだが。私には今の
所確認出来ていない。
 なお大江匡房らの将棋ルールの強要が原因
とする、本ブログにとってはより、この条件
はよりきつく、院政期以降に対応する
12世紀以降に”国”が成立してくれないと、
本ブログの論理とツジツマが合わなくなる。

字体”国”と、”王将”発生同時期説を取る

からである。
 更に笹原氏は、口囲み王が、漢代の成立だ
と述べながら、国は國の草書だとも考えられ
るとしている。しかし≪日本の漢字の「國の
草書」だ≫とされているものは、単に国が発
生してから、それを草書にしただけである疑
いを依然私は持っている。「國」直結草書の
リストの中に、笹原氏式の草書が発見できて
いないためである。
 だから”口囲いの王が漢代に成立している”
というのなら、”角川 新字源”小川環樹他
編書1968年に、書かれているように、
『口囲み王に点を打って、国の字にした』と
して、特に問題は無いのではないかと、私は
まだ疑う。
 特にこのケースは仮に、鎌倉時代中期の

平家物語の普及者が真”犯人”なら、その
業績から見て、特に「謝罪する」必要も、
無いのではないかと私見

するのだが、どうなのだろうか。
 なお笹原氏の”日本の漢字”には、『中国
唐代に、漢字書体”国”が、一時的に有った
形跡が有るが、消滅。その後日本で独立に復
興した現行の国の字を、日本の教育漢字の中
に中国当局が発見して、たまたま取り入れて、
中国の国の簡化字とした』との旨も書かれて
いた。実質的に、”国”の字は日本人作であ
ると見る意見が、この記載から見ても、現在
学会多数派と見てほぼ間違い無いように、私
には見えた。(2021/04/05)

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