SSブログ

前角超一目の前は前進で無く「○の上に在」(長さん)

本ブログでは従来、桂馬が桂馬跳びである
事を証明する為、山田勝美「漢字の語源」
角川書店の「前」の「止月」部分の説明に
基づいて「靴を履いて道路を歩いている」
としているから「前進して」と訳してきた。
 が、webの情報を総合すると、「月」
部分を「靴を履いた足」のように解釈する、

別サイトが見当たらない。

「甲骨文字の意味を訳した」との意を山田
が述べているので「前」の字の変形草カン
ムリ+月は、「靴を履いた足」となるとい
う論は中国の19世紀の日本の近世~近代
に成立した事になり、二中歴の平安将棋の
部分の解釈には、その点でも、なら無い。
 そこで今回は、上記点を精読し直し、
「前」の「止月」つまり変形草カンムリ+
月部分は、”何らかの物品を元升目基準点
に置き、そのすぐ前ないしすぐ上の升目に
出っぱっているいるか、または乗っている
「止」(通説では「止」という部分は「人
間の足」だという事である)を示している”
と解釈し直し、

「『前角超一目』は、元升目のすぐ前か、
または上升目の更に角升目に1升目超えて
跳ぶ」

と訳し直す事にしたので、以下に報告する。
 つまり、

「前」の字は、変形草カンムリが、意外に
も中心的役割を担っている

という事らしい。
 さて、本論に入る前に以下の、私には
webには見当たらない情報を、予め説明
しておく。
 そのwebの情報には無く、山田勝美
「漢字の語源」/角川書店に特徴的な、
1字漢字の解釈法のパターンというのは、

ヘンとツクリがある字が、3つの意味成分
からなると、ほぼすべての漢字について見
ている

という事である。へんとツクリで2つでも、
2つの意味では無くて3つである。つまり、
1)音を表す部分の元々の甲骨文字的表意。
2)音から来る、別の字の意味の借用。
3)別の部分の甲骨文字的表意。
 つまり、2)が余計に加わる。
 そして「前」については、通常の字の多
くは1)が消え、2)と3)から、解釈す
べき1字漢字の意味が発生するのだが、

前については例外で、1)だけ残った

と取れる意味の事が、「漢字の語源」の
321ページ付近の「前」の項目のところ
に書いてある。
 すなわち「前」は、
1)が、なんらかの物品の接してすぐ前か、
接して上に足が乗っているという甲骨文字
表意。そして「足」つまり変形草カンムリ
の位置が、「月」形という基準点に対して、
「接して上」か「接して前」かを、漢字
「前」の意味として、マウスのポインター
の如くに指し示ている。
2)が、斉の古音のセンから連想される、
揃えるとの意味。
3)が、リの甲骨文字的表意である「刀」。
 ようするに普通は2)と3)だけ残り、
「刀で切って物の先を揃える」が「前」の
意味になるはずなのに、

この「前」という字は、イレギュラーで、
普通は残らないはずの「原始意」の1)の
「接して前に」または「接して上に」の意
味という「借用」だけが、ほぼ生き残った

という事だそうである。ここまではweb
の他情報と矛盾は無いのだが。問題は、
山田の言うように「『前』の『月』部分が、
『靴を履いた胴体』だ」と主張するweb
サイトが、私には見当たらない。結局
webサイトをよく読むと、靴では無くて

「舟」「台」「切り株」「加工した木材」
のどれか

のように、私には読み取れる。なお、置い
た物すなわち「変形草カンムリ」と現代で
は表記される「止」は、「人間の足」と、
ほぼ皆考えているようである。
 ちなみに「台」を「盤」とし「その上に
接して人間が足を置き、足の爪切りをして、
揃えるの意味になる」と取れる旨を、説明
していると、私には読み取れる、サイトも
有るようである。
 だから、「前」は、「前進してから」と

意訳は出来無いのに、私は気がついた。

繰り返すと結局「前」は「舟」「台」
「切り株」「加工した木材」のどれかの「
位置基準物体」が存在する将棋の「升目」
の、接して前または、接して上「の升目」
の意味になると考えられる。そうすれば
その基準点の隣升目から、その更に角の升
目を前記基準点から見ると、まさに桂馬跳
びの位置の升目になり、「前角超一目」は、

「一目跳ばして移る」と訳せる

ように思われた。
 そこで、表題に書いたように「前」の字
は、結論として「『〇の上に在』または、
『○の前に在』の意味」(が一つ有る)と
いうことに、なったのである。蛇足だが、
接して「上」または「前」位置を、スター
トラインとみて、「前」には「予め」の
意味も発生したという事だ。
 ところで、二中歴の将棋・大将棋の項目
では、「前」の字が、奔車と注人のところ
にも出てくる。この「前」も同じ解釈で、
矛盾が起こると具合が悪い。が、大丈夫な
ようだ。
 どちらも「行前後」のようであるが。語
源に沿って厳密には、「縦升目筋で直ぐ
前隣の升目か、または、後退して動く」と
訳せ、後ろへは動きが有るだけでなく、行
ける升目数が幾らでもが、含みになるとい
う点で「前」と違いがあるのだが、「前」
の意味で述べたように、前方へは1升のイ
メージが、強い事が漢字の語源から明らか
である。詳細は山田勝美「漢字の語源」/
角川書店り「後」「行」の各甲骨的表意説
明から、そうなるようである。なお「後」
の「糸」の上部部分には、前記で述べた、
「1)音を表す部分の甲骨文字的表意。」
が無く、2)が「通」の意味。別部分は、
「行ニンベン」部と「及」部と2つ在り、
「行ニンベン」部が前後路、「及」部が
「止」の逆歩みだという事である。
 次に「行」の字は甲骨的意味に、動き
が無く「十字路」を示すだけということだ。
 ただし二中歴では、奔車のときには
「不云多少」、注人のときには「歩兵が
後ろに居るので、後退し辛い」がその後
直ぐに記載されるので、今述べたように
語源に忠実解釈をして、「前」と「後」と
で、お揃いになってはい無い事により矛盾
が、特には起こり難くなってはいるようだ。
 よって以前のように、前を「一歩前進し
てから」と意訳するのは、相当にマズかっ
たようだが。
 「前か上と解釈できる隣升目」と訳し、
「その更に角に一目跳んで、いわゆる桂馬
跳びをする」と解釈出来た。そして、この
ように

漢字の語源に、こだわって訳す事に、全く
無意味と決め付けるほどの難点も特段無い

と考えられたように、本ブログでは見てい
るという結論になる。(2023/09/10)

nice!(7)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー