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中曽根遺跡のカンザシ香車。なぜ成りが奔俥(長さん)

以前に富山県高岡市中曽根遺跡で、成立年代が
少なくとも13世紀から16世紀の間に入ると
される、奔駒に成る香車駒型飾りの付いた
カンザシと見られている出土金属物を紹介した。
 その際本ブログでは、奔車に成るとしたが、
写真画像から見て不正確であり、傷かもしれな
いが、第2字目は車ではなくて俥である。今回
は、この第2字目を集中して問題にし、

奔俥である、その理由について考察する。

前回、第2字目を誤読したのは、本ブログの管
理人の、ほぼ単純な不注意であり、彫跡は歪ん
でいて、きれいに削って有るとは言えないが、
車ではなくて、実際にニンベンは有るとみられ
るという意味である。そこでこのケースは、

実際に「俥」の字が彫られていると見なす。

中国シャンチーの現代の書き字作駒には、俥が
あり、本ブログでは興福寺1058年物習字板
の酔像は、中国象棋書き字駒手法の模倣との解
釈を取っている。イスラムシャトランジや、
宝応将棋を中国流に唐王朝時代に模倣したとき
に、車と俥を輜車・輜俥等と書いて使ったので
はないかと疑っているという意味である。その
ため、

明らかに成立時代がそれより後のこのカンザシ
のケースには、中国シャンチー駒敵味方区別法
の、敵駒の車の「俥」の字は、国内で真似が出
来る

と解釈する訳である。なお俥は日本で発明され
たとの説が通説のようであり、平安末に中国シャ
ンチーで、実際に具体的に車駒が字体で区別さ
れるケースが、有ったのかどうか未確認である。
中国では、象は相手を像では無く相と書いて区
別する等、日本と具体的な流儀は違う。何れに
しても。
 しかしその解釈は、カンザシに奔俥と彫る理
由の説明としては、全く意味不明である。単に、
車という漢字が、類似品として別に有るから、
シャンチーでは、敵と味方駒を区別するために
俥を使っているという用途だからである。実際、
馬とニンベンの馬とは、意味まで全く違うが、
敵味方駒を区別できるという理由だけで、中国
シャンチーでは、ペアにして使う場合が有る。
 そこで、出土中世カンザシに奔俥が使われる
理由を、奔車では都合が悪い原因が、自明で無
いため、別に考え無ければならない事は明らか
となる。
 前提として、奔車は馬や牛の引く大型の、運
転手が運転が、へたくそで動きが正常ではない
車両。奔俥は、引く人間が乱暴な人力車とイメー
ジし、それで正しいとして以下議論する。後者
を使う理由は、日本の

中世の婚期女性が低年齢で、成人女性よりも、
かなり身長・体重共に小さかったから、それを
イメージして、カンザシ飾りの文字も書かれて
いたのではないか

と考える。つまり元々、

十歳代前半女性の付けるカンザシだったのでは
ないか

という意味である。
 以上の解釈は、恐らくカンザシを普段つける
ような日本の中世の女性は、政略結婚等の横行
により、十代前半で嫁ぎ先が決まり、よって、
カンザシを付けているような時代には、成人時
の体格よりも、平均してかなり小柄であったろ
うという推定に基づいている。当時はカンザシ
をつける女性として、そのような十代前半の
小柄の女性が、一般的にイメージされたので、
カンザシ造りの細工師も、

大型車両をイメージする字を、将棋駒型面に書
いては、用途として的確ではない

と考えたのではないかと疑われる。身長・体重
共に、まだ小さい女性が使う車両をイメージ出
来るような単語を、将棋駒名のイメージから、
はずれ無い範囲で選択すると、香車は元々華奢
な乗り物がイメージされるから良いとして、

孔子等の大の大人が複数人乗車する、運転の下
手な大型車両の奔車の表現では、カンザシの使
用人物の、十代前半女性のイメージに合わない

という事になって、人力車という比較的小型の
車両に、運転が雑なの意味で奔を付けた、奔俥
にしたのではないかという事になる。
 逆に言えば当時の摩訶大大将棋/摩訶大将棋
(変種)の香車の成りを、敢えて奔俥と称する
事は実際には、ほぼ無かったのではないかとも、
予想される。作駒で敵味方を区別するために、
これらの将棋の香車を香俥と書いたり、反車を
反俥と書いたりする事が、絶対無かったとは言
えないが。プレーヤーがそう表現する事は、誤
解を生むだけで、ゲームする上ではメリットも、
取り立てて考えられない為、ほぼ無かったに違
いないという事である。ただし、そのような駒
が有るという話は、現代人の中国シャンチーに、
そのような作駒も有ると知られている程度には
知られていたとすれば、カンザシ職人にもまね
て書けたのであろう。
 以上のような考察から、確かに香車の成りか
ら来ていて、実在していたとはいえ、奔俥とい
う単語は、実際には日本の中世の婚期であった、
十代前半の女性用のカンザシの将棋駒型の刻字
等でしか、頻繁には使用され無かった単語なの
ではないかと、本ブログでは今のところ疑って
いるという事になる。(2022/04/15)

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