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長野県佐久市西八日町遺跡で6C奔王墨書土器(長さん)

以前、今回紹介する佐久市岩村田の西八日町
遺跡で仙人墨書遺物が発掘され、古墳時代
から、渡来系の文化人が山際に住んでいて、
有力者も居た開けた場所であろうとの旨紹介
した。今回は、それを支持する奉王墨書土器
が同遺跡で出土しているとの旨の紹介である。
なお、3㎞×3㎞程度の広さがあるため互い
に関連しているかどうかは謎だが、西八日町
遺跡は、岩村田遺跡群に含まれ、岩村田遺跡
群全体として、複数の将棋関連墨書遺物の出
土例を、本ブログでは過去に紹介している。
 さて遺物群の写真がweb上に公開されて
いて発掘報告書に載っている。発掘報告書が、
奈良文化財研究所の発掘報告書データベース、
全国遺跡報告総覧に登録・公開されている。
pdfファイル名は、以下の通りである。
115007_1_岩村田遺跡群西八日町遺跡Ⅰ.pdf
 発掘報告書の表題は以下の通りである。
佐久市埋蔵文化財調査報告書第287集
岩村田遺跡群:西八日町遺跡Ⅰ、2022年3月、
佐久市教育委員会。
 遺跡の場所は、今回についても長野県
佐久市岩村田字西八日町であるが字西八日町
は岩村田の2152-13付近との事である。
 発掘報告書末尾の抄録によると、遺物が出
土したのは、西暦1983年となっており、
報告自体が遅れた事を示しているようである。
 遺物の成立年代は、第1号と第3号竪穴
住居跡が6世紀前半との旨が、発掘報告書の
第7ページに、また発掘報告書の第52ペー
ジ付近の記載により、第54号竪穴住居跡は、
西暦700~725年の飛鳥時代末から、
奈良時代初にかけてとの旨記載がある。
 なお第53号竪穴住居跡は、西暦750~
775年程度の奈良時代後半であり、別の文
字史料、奉山が書かれている墨書土器の成立
年代である。
 遺物の写真は、第1号住居跡から出土した
奉王墨書土器が、発掘報告書の第302ペー
ジの、第1号竪穴住居跡出土遺物写真図版の、
下から2段目左に有り、遺物番号で第1竪穴
住居跡出土遺物の第5番との旨ナンバリング
されている。

西八日町奔王1.gif

中段左から画面の中央に向かって、横に左か
ら右に、漢字で奉王と書かれているように見
える煤模様が在る。
 第3号住居跡から出土した奉王墨書土器は、
発掘報告書の第303ページの、第3号竪穴
住居跡出土遺物写真図版の、最下段の左に有
り、遺物番号で第3竪穴住居跡出土遺物の第
7番との旨ナンバリングされている。

西八日町奔王2.gif

上段右に奉、その左下のほぼ中央やや下段に
王と、やや不鮮明ただが漢字のように見える
煤模様が在る。
 第54号住居跡から出土した奉王墨書土器
は、発掘報告書の第335ページの、第54
号竪穴住居跡出土遺物写真図版(2)の、
やはり最下段の左に有り、遺物番号で第54
竪穴住居跡出土遺物の第32番との旨ナンバ
リングされている。

西八日町奔王3.gif

右下に、煤に覆われているが漢字で奉である
と言われれば、そのようにも見える煤模様が
在り、今度は左上で、画面でも左上端に、
太いゴシック体で王と書いて在るようにも見
える。
 長野県佐久市岩村田付近に、古墳時代の6
世紀前半に有力者が居て、道教の仙人のする
ような祭祀をして暮らしている住人から、税
として何らかの貢物を取得していた事。古代
の律令国家が成立すると、住人は引き続き、
大和朝廷に対して納税していた事を示してい
るように解釈できるかもしれない。
 更に、第53号住居跡からは奉山墨書と
疑われる遺物が出土している。すなわち、
発掘報告書の第334ページの、第53号
竪穴住居跡出土遺物写真図版の、最下段の左
から2番目にそれは有り、遺物番号で第53
号竪穴住居跡出土遺物の第7番との旨ナンバ
リングされている。

西八日町遺跡泰山.gif

 写真の遺物の下の方の、中央やや左寄りに、
やや薄いが泰ではなくて奉と、漢字で書かれ
ているように見える煤模様が在り、縦にその
下の、遺物の底にかなり近い所に、比較的濃
く、山と読める模様が在り、縦に奉山と書か
れているように、上図から見える。
 奈良時代の後期であり、通常の山岳信仰の
祭祀をする、大型飾り土器かもしれない。以
前に紹介した、仙人墨書遺物と組み合わせて
考えてみると、

古墳時代の道教的泰山信仰は、奈良時代後期
には、いわゆる日本の神道の山岳修験者信仰
に時代と共に転換

したのであろう。山はいつも在るので、それ
に対する信仰そのものは、普遍だったという
事だろう。
 以上のように、長野県の山沿いの遺跡であ
るため、古墳時代には大陸から伝来した、
鉱山開発とも絡んだ、道教信仰が行われ、
有力者も存在した地であると見られ、古代に
入っても律令の村落が在り、現代でも理解可
能な山岳信仰が、普通に行われた地なのでは
ないかと、この西八日町遺跡については想像
する事が、一応可能であるように私には思え
る。(2022/06/17)

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